本日の天木直人メルマガから引用して掲載します。
引用開始
ロシア戦勝65周年記念行事と日本の存在感のなさ
誰も指摘しないことであるが私にとっては重要な記事であるので書いてみる。
5月10日の各紙が5月9日にモスクワの「赤の広場」で行なわれたロシア戦勝65周年
記念軍事パレードについて報じていた。
報道によれば今年のパレードには二つの大きな意味があった。
一つは北大西洋条約機構(NATO)の米、英、仏、ポーランドの軍兵士がそれぞれの国から
70名パレードに参加したことだ。これは1965年に軍事パレードが公式な行事になって以来
はじめての事だという。
もう一つは、プーチン首相がその前夜に、記念パレード出席のため訪ロした中国の胡錦涛主席と
会談し、歴史認識の一致を確認していたという事である。日経や東京新聞は、これが北方領土問題
の解決に微妙な影響を与える可能性があると書いていた。
私が驚いたのはプーチン首相と胡錦涛主席の間に挟まれてドイツのメルケル首相が式典に参加
していたことだ。
ロシアの戦勝記念日とは、日本と並んでドイツのファシズムに勝利した日を祝う日である。その日に
ドイツの首相が招待され、戦勝国の元首らと並んで祝賀パレードを祝っていた、という事実だ。
報道によれば25カ国もの元首が参加したという。元首でない代理出席国を入れればおそらく
かなりの国が参加した一大外交行事だったに違いない。
しかし、その報道には日本の参加に関する言及が一切ない。
日本が招待されていないはずはない。招待はされていたが現地の官僚大使に出席させていたのだろう。
特使を送ったという報道は一切ない。日本の外交的存在感はゼロである。まるで報道の対象外である。
もしドイツが招待されて日本が招待されていなければ大問題だ。ドイツと違って日本はいまだ
ファシズムを公式に清算していないので、今でもファシズムの国を引き継いでいる国と見なされて
いるのだろうか。イタリアの出席はどうなっていたのか。
それにしてもなぜこのような重要な国際行事に鳩山首相は出席しなかったのか。岡田外相を代理出席
させなかったのか。小沢幹事長などの大物政治家を特使として派遣しなかったのか。
日本では大臣が連休中にあれだけ無用な外遊をしていたというのに。
連休が明けてもろくな仕事をせず、政治家が暇を弄んでいるというのに。
私はここに日本の政治家や外務官僚の外交センスの劣化を見る。私が現役の外務官僚であった頃には
有り得ない事だ。
しかし、私は単なる外交的センスのなさ、だけではない、もっと大きな日本外交の欠点をこの報道から
読み取るのだ。
日本は大きな国際情勢の流れの中から完全に取り残されている。
世界の主要国は、それぞれの利害関係を有しながら、つまり緊張感を持ちながら、確実にかつての
対立関係から、あらたな関係を模索しつつある。
米ロの関係は冷戦下の米ソ関係ではもはやない。NATOとロシアの関係は変化した。中国はもはや
揺るぎのない国際政治の大国だ。欧州はその統一に向かって産みの苦しみの只中だ。
そんな中で日本だけが米国の従属下から一歩も抜け出せないまま、いや、抜け出そうとしないまま、
普天間問題で一人相撲を取っている。抑止論を振りかざし中国や北朝鮮の脅威を騒ぎ立てている。本来は
もっとも良好な関係を持たなければならないこれらアジアの国々を敵視し続ける。
それもこれも日米同盟の呪縛からいつまでたっても自立できない、しようとしないからだ。
だからと言って本気で米国との同盟関係を信じているかといえば決してそうではない。米国を心から
愛しているかといえばそうではない。愛のない仮面夫婦だ。DVにおそれながら毎日を過ごしている。
政治外交史を専門とする若手保守学者の井上寿一学習院大学教授は、その最近著「吉田茂と昭和史」の
中で次のように書いている。
「・・・戦後日本の矛盾は、戦勝国アメリカと敗戦国日本とが協調関係を築いた事に起因している。
この矛盾を解決する方法が一つだけある。日本が再びアメリカと戦争を戦い勝利すればいい」、と。
そして、その後に、井上教授は次のようにこの国の限界を喝破している。
「第二次日米戦争の決意がなく、あるいは決意があっても勝利の見込みがないのであれば(おそらく
今の日本には決意も勝利の見込みも、どちらもないだろう)、この矛盾に耐えるしかない」、と。
この屈折した日本から脱却し、二つの矛盾する日本の国体、つまり憲法9条(善)と日米同盟(悪)の相克を
克服しない限り、日本の将来はない。
ロシア戦争65周年記念に参加した主要国は、米国もNATOもロシアも中国も、いずれも軍事国家であり
軍事覇権国家である。
なぜ日本は気づかないのか。軍事力を頼みとするこれら諸国の安全保障政策は、所詮は駆け引きだ。
だまし合いだ。
そんな国々と軍事的に競い合ってどうなるというのだ。そんな国々と軍事同盟を結んで力の均衡論を振り回して
どうするのだ。それらは当の昔に役割を終えた時代遅れの考えなのだ。
日本はいまこそ平和憲法を全面に掲げ、軍事力を頼みとする外交から決別すると宣言すべきだ。
世界の脅威にはならない、世界の脅威には屈しない、平和こそ国是だ、と宣言すべきである。
鳩山首相は沖縄や徳之島などへ行くよりもロシアの戦勝65年記念式典に出席し、世界の首脳の前で
つまり、オバマ大統領やメドベージェフ大統領や胡錦涛主席の前で、軍事力に頼らない憲法9条外交を
示すべきなのだ。
そうすれば、普天間基地も北方領土問題も中国の脅威も何もかも吹っ飛んでしまう。政治的に解決できる。
如何なる国も憲法9条が人類の目指す究極の目標であることに反論することはできない。
世界の国民が拍手喝采する。軍事パレード祝うこれら指導者たちは自らを恥じる事になる。
憲法9条外交こそ最強の安全保障政策なのである。このことをなぜ日本の指導者は誰一人気づかないのか。
普天間問題で明け暮れている日本はいまこそ目を覚ます時だ。
私が6月末に講談社から出版予定の「さらば日米同盟」の主張がここにある。
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天木直人のメールマガジン 2010年5月11日発行 第167号
バックナンバー: http://premium.mag2.com/mmf/P0/00/75/P0007564.html
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引用終わり