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2009年04月03日

 オバマのアフガン新戦略 ほか

 
 オバマのアフガン新戦略が日本に送るメッセージ


 3月27日、オバマ大統領が対アフガン新戦略を発表した。「この戦いは武器だけで勝つ事はできない」と強調して、外交官や経済支援に当たる文民要員も増強すると明らかにした。
  オバマ大統領は間違っている。「この戦いは武器だけでは勝てない」のではない。「この戦いは武器では 勝てない」のだ。米国はまず武力行使の停止を宣言し、平和を実現した後で 経済支援や文民協力を行なうべきなのだ。その協力を世界に求めるべきなのだ。

 最近発売された「日米同盟の正体」(講談社現代新書)の中で、著者の孫崎享氏は つぎのように書いている。国際貢献を謳う背景には米国の長年の戦略があると言うのだ。

 「・・・(1990年代初期、日米安全保障面の責任者である国防省日本部長 の任にあった)ポール・ジアラは論文『新しい日米同盟の処方箋』(1999年) で次の説明を行なった。
 『PKOや人道援助、災害援助などの分野は政治的に受け入れやすい こともあり、共同で行なうことは同盟の結束を促す上でよい機会である。人道 支援などで作戦を日常的に行なうことは、はるかに緊張度の高い有事への作戦の準備としても絶好の訓練になる。このような活動で求めるものは有事と共通である・・・』
 今日米国は、イラク戦争への協力、アフガニスタンへの自衛隊派遣の模索に 見られるように日本に軍事力を高めさせ、これを積極的に米国戦略の中で活用 していくという姿勢が明確である。そしてこの傾向は間違いなくオバマ政権に 継承される・・・」

 武力行使と平行して経済支援や文民協力を行うことは目くらましだ。上手くいくはずはない。


 米国に「対話重視外交」などできるのか  

 
 ブッシュ大統領の単独主義から「チェンジ」することを掲げて登場したオバマ大統領。その政策は対話重視ということになっている。外交では「国際協調」路線となり、多国間外交となって現れる。イランへの外交対話の呼びかもオバマ新政権の柔軟なアプローチとして注目された。

 しかし米国は本当に「対話重視外交」にチェンジしたのだろうか。

 この問いかけに見事に答えているのが3月30日の読売新聞に掲載されていた「『対話重視』外交の盲点」という記事である。国際交流基金日本研究・知的交流部長の小川忠氏は次のように書いていた。

 「米国が対話と交流を重視する政策をとることを歓迎したい。しかし、対話と交流を通じて米国を知れば知るほど、(果たして)世界の若者は米国を好きになるだろうか・・・会って対話すれば対米感情が好転するという見方も(また)西洋優越意識の表れといえないだろうか・・・」、と。

 対話とは相手の意見に耳を傾ける事である。相手の意見に同調点を見つけようと努力する事である。自らの誤りを認める謙虚さと、相手の主張が正しければ譲歩する勇気を持つ態度である。 その気がない対話は対話ではない。対話するジェスチャーでしかない。最後は決裂して強硬手段に訴える事になる。果たして米国に本物の対話外交ができるのか。


 孫崎享著「日米同盟の正体」(講談社現代新書)の書評が見当たらない

 どうやら政府・外務省は外務省OBが書いたこの本を徹底的に無視するつもりだ。この著書が脚光をあびては困るのだ。

 そうであれば私が紹介する。そこに書かれている以下の事はすべて資料や関係者の発言に基づいて書かれた事実なのである。国民必読の書である。若い世代が読むべき本だ。

1.日米安保条約は、2005年10月29日の日米外務・国防大臣間の合意(日米同盟:未来のための変革と再編)によってとって代わられた。しかし政府・外務省は、国民には、何も変わらない、といい続けてきた。

2.日米同盟関係というが、実態は、守屋元防衛次官が認めているように、米国が一方的に決めたものを日本が従うだけの関係である。そもそも自主、自立した安全保障政策を持たない日本なのだから、「共通の戦略」などあろうはずはない。米国の戦略に従うほかはない。

3.日本に国際貢献を求める米国の狙いは、政治的に受け入れやすいものからはじめて、最後は軍事協力に行かざるをえない状況にもっていくことである。PKOや人道支援、文民協力を言い出し始めたのはその戦略のあらわれだ。

4.日本人は安全保障問題を軍事的、戦略的に考える事ができないので、経済を絡ませて説得すればいい、と米国は考えている。石油に依存する日本は中東問題に貢献しなければならない、などというのがその好例である。

5.危険の分担は求める。しかし自立した抑止力は決して持たせない。これが米国の一貫した対日安全保障政策である。

6.米国の重要な外交は謀略でつくりだされてきた。南北戦争も真珠湾攻撃も9・11も、それをきっかけに国民を戦争に駆り立てる謀略だった。米国は北方領土問題でみずからの立場をわざと曖昧にし、日本とロシアを永久に争わせる、それが米国の戦略だった。

7.日米同盟を唱える者たちは、米国の戦略が正しいと思ってそう言っているのではない。損得勘定で得だと考えたからだ。「議論で勝って(正しい政策を主張して)、人事で飛ばされる」、それが組織で生き残る知恵だ。なんと寂しいセリフだろう。

8.いまの米国の安全保障政策の要は中東政策である。その米国と軍事的一体化を進める日米同盟強化が、国益なのか。日本国民のためなのか。

9.日本ではいま、ミサイル防衛が国防の柱になりつつある。しかしそれは有効ではない。ミサイルが真に怖いのは核弾頭を搭載した場合である。  そしてそのミサイル攻撃に最も脆弱なのは日本なのだ。日本はミサイル戦争をしてはならない国である。 
 

 小沢民主党にエールを送りたいが・・・
  

 小沢問題は二つのまったく異なった問題が混同されている。一つは小沢一郎の金権政治批判であり小沢一郎嫌い問題である。もう一つは検察官僚の横暴である。国民はメディアが流す小沢批判に目を奪われて検察官僚の横暴の深刻さを見落としてはならない。

 小沢民主党が潰される事になれば、この国は官僚とメディアという目に見えない無責任な権力が、今よりも倍加してのさばる事になる。

 そうなればもはや如何なる権力批判もできなくなる。対米従属が無条件で進みこの国の平和理念は空疎なものになる。支配者と被支配者の関係が固定される。そうさせてはならない。

 この国の指導者になろうとしている政治家を一夜にして潰せる検察の権力を放置すれば、国民弾圧など朝飯前ということになる。

 果たして小沢一郎と民主党はこの戦いに勝てるのか。それはもちろん私には分からない。小沢一郎と民主党の出方を見ていると心細い。それでも小沢民主党にエールを送らなければならない。それがつらい。 

 矢野絢也が語る小沢民主党への直言   


 週刊新潮4月9日号の「永田町を斬る!」で矢野絢也元公明党委員長が次のように書いていた。私は彼の政治評論をどの政治評論家のそれよりも信頼、評価している。小沢民主党に対する以下の直言も私はまったく同感だ。小沢一郎も民主党も耳を傾けるべきだ。

 「・・・洪水のような西松がらみの献金情報は・・・仮に検察のリークであるにしても、ボディブローのように小沢氏にダメージを与えている。小沢氏の反論に多くの国民は同調していない。小沢辞任を求める世論は多い・・・ 政治はマスコミもひっくるめて所詮、権力闘争の修羅場なのだ。すでに小沢氏は政治に負けている・・・氾濫する報道が怪しからん、と小沢氏が怒る気持ちはわからないでもないが、怒ってみても国民の疑惑は消えない・・・ 後は小沢氏がどう判断し、それを有権者が選挙でどう判断するかの問題だ・・・ 民主党議員は、「小沢氏は選挙に不利になると判断すれば自発的に辞める」と期待しているらしいが、そうやって洞ヶ峠を決め込んでいるうちに国民は民主党を見捨てる。これではせっかくの政権交代の可能性を確実に潰す。小泉元首相のブームは、是非がはっきりしていたことが源泉だった・・・こういう大事な時に是非を論じない民主党に政治の劇的転換を期待するほうが無理かもしれない。ただ口をつぐんで周りを見回すだけの民主党議員の無気力さ、ぶざまさ。まだ麻生おろしを堂々と言う自民党のほうがまともに見えてくる・・・」

 
 ドル支配体制に挑戦し始めた中国
  
 3月28日の朝日新聞は、中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁が「基軸通貨として米ドルには限界がある」という趣旨の論文を発表した、と書いていた。朝日新聞はまた4月1日の夕刊で、中国がドル基軸通貨体制からから距離を置き始め、人民元によるアジア共通通貨圏構想を本格的に検討し始めた、と書いていた。

 おりからG-20首脳会議がロンドンで始まる。サブプライムローン問題に端を発した世界金融危機が騒がれた前、あらゆる経済専門家が米国のドル支配は終わった、パラダイムシフトなくして世界経済危機は乗り切れない、と叫んでいた。

 それから半年、世界経済は更に深刻さを増している。それにもかかわらず世界の首脳は、自国の利害を優先し危機打開の国際合意を見出せないでいる。 米国はルールを変えようとせずにドル覇権にしがみついているかのようだ。対米従属しか策のない日本は、世銀・IMF体制支援を繰り返している。 そんな中での中国政府のドル支配体制に対する挑戦の動きである。

 しかし、私が注目したのは、中国要人のドル離れの発言だけではない。その発言が、中国国民の高まる不満に押され、それを静めるために行われ事を知ったからだ。

 発売中のニューズウィーク日本語版4月8日は、「アメリカに甘い」自国政府に反発、と言う見出しの記事の中で、次のように書いていた。

 「アメリカ発の世界不況のなか、中国では対米批判が噴出している。それをもっとも気にしているのは米政府ではなく中国の指導部かも知れない。 危機を引き起こした張本人であるアメリカを、なぜわが国政府は支持し続けるのか・・・不況にあえぐ中国国民の間でそんな感情が高まっている・・・
 こうした批判を静めるために、中国政府はアメリカに対して厳しい態度を取り始めた・・・周総裁は3月23日に公開した論文の中で、ドルに代わる準備通貨をIMFが創設すべきだと主張した。これに先立つ3月13日には温首相が、『(現在の金融危機における米国債保有を)心配している』と発言した・・・
 それでも中国強硬派の不満はおさまらない・・・IMFの準備通貨をドルから変更するだけでは不十分だ、IMF自体がアメリカの管理下にあるではないか、中国政府は米国債に投資するのをやめて、その資金を国内のインフラ整備や国防強化、社会福祉の充実にまわすべきだ、と主張する・・・」

 正論だ。「アメリカに甘い」と自国政府に堂々と反発する中国国民と、その声を背景に対米外交を進める中国政府。もしそれが現実のものであれば、これこそが自主、自立した外交ではないのか。米国の単独主義外交に唯一抗することのできる国民外交である。

 思えば1997年のアジア通貨危機の時、当時の宮沢首相、榊原財務官は円アジア通貨圏構想を未熟なまま提案し、米国の逆鱗に触れて潰された。

 それから10年余がたって、中国は国民外交に裏打ちされた元アジア通貨圏構想に向かって動き出したのだ。経済危機に襲われ弱体化した米国経済は「ドルは現在極めて強い。米国が世界最強の経済で、政治システムも最も安定していると投資家が考えているからだ」と強がりを見せる(3月24日のオバマ大統領の記者会見)一方で、生き残りをかけて北米通貨圏構想(アメロ)を密かに進めているという噂はたえない。今まさに壮大な金融戦争が繰り広げられているのではないか。
 何事につけて中国を批判するわが国の強硬派は、中国の強硬派を少しは見習ったらどうか。叩く相手を間違えることなく、日本政府に自主、自立した対米経済外交を少しは要求したらどうか。日本は本気になって米国から自立した経済戦略を語るべきだ。日本国民はその事を政府に突きつけるべきだ。

  
 
浅田真央ちゃんの敗北とその理由   
 
 発売中の週刊文春4月9日号に、3月24日から米ロサンゼルスで開かれた世界フィギュア選手権で完敗した浅田真央選手の敗北の理由について書かれた記事があった。
 ことの発端は3月中旬。キム・ヨナ選手が韓国のテレビ局のインタビューで「2月の4大陸選手権試合の直前の練習で日本選手に妨害された」と発言した、と報じられたことにある。
 これに過剰反応したのが日本側のスケート連盟。妨害した事実はありませんと声明を出し、韓国スケート連盟にも調査を求める公式文書を送るなど否定に躍起になった。
 両国連盟が話し合いの場を持ち一件落着した後も、日本スケート連盟の関係者には、「韓国側の妨害工作だ」、「絶対今回だけは負けるな」などと憤る者もあらわれたという。浅田選手自身もロサンゼルス入り後この件で取材を受けざるを得ず、日韓対決のような周囲の雰囲気に巻き込まれて神経質になっていたという。その影響もあって、我々がTVで見たとおり浅田選手はミスを連発した。
 それでも日本の関係者中には「キム・ヨナは点数が出すぎじゃないか」、と敗北をジャッジのせいにしたり、感情的になったりした者が多かったという。
 この件について聞かれた安藤選手のモロゾフコーチはこう語ったという。
 「(今回安藤選手が三位に入ったのは)誰一人として僕のじゃまをしなかったからだ。連盟の中には変わった人がおり、いろいろ口を挟んでくる。普通なら一番に選手、二番にコーチだが、日本は連盟があって次に選手。これはいけない。きょうの真央にも同じことが起きた・・・」

 私がこのメールマガジンで言いたいことは、このモロゾフコーチの言葉の中に
ある。
 権威や組織を優先する日本社会の特殊性は、メリットも確かにあった。しかしそれはまた官僚支配や権威主義となって目に見えない社会的圧力になり、個人や民間の自由なエネルギーを押さえ込んできたのもまた事実である。
 おりしも日本は未曾有の政治、経済の混迷期にある。この困難な時に、官僚、組織、権威、が幅をきかせ、何もしない、できないのに、その既得権だけで国民の財を食いつぶしていく。
 その一方で、権威を持たない個人やフリーランスや若者が割りを食わされたまま沈黙を続けざるをえない。
 これは不合理ではないか。この構造を主客逆転しなければ日本は救われないのではないか。
 選手よりも監督が目立った星野ジャパンよりも、選手を信じ、尊重し、選手に一丸となってやる気を起こさせた原ジャパンが世界一になった理由はそこにあるのではないか。
 一度は政権交代を起こしてみたいと国民の多くが思い始めた理由もそこにあるのではないか。
 さびしげな表情を見せた真央ちゃんは、「また頑張りたいという気持ちが出てきた」とけなげに語ったという。
 その真央ちゃんに再び勝利の笑顔をよみがえらせるためにも、スケート連盟は引っ込むべきではないか。
 既得権に胡坐をかく日本の支配者たちは、このあたりで総退陣すべきではないか。そう考えさせられる週刊文春の記事であった。

 


 

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2009年03月28日

小沢政権誕生を恐れる外務官僚 ほか

2009年3月24日発行メルマガ第0114号要旨

 北朝鮮ミサイル発射問題に見る日本外交の無策 
―3月24日発行メルマガ第0114号要旨

  私は3月14日のメルマガで北朝鮮ミサイル発射問題の深刻さについて書いた。日本が成すべき事は米国、中国と協議して、何としてでも北朝鮮に発射を思いとどまらせるべきだ、と書いた。日本の外交力がいまこそ問われている、と書いた。それから10日あまり、どうやら日本はこの最重要外交ですっかり米中に外されてしまったようだ。

 北朝鮮に発射を思いとどまらすことができるかどうかは、勿論わからない。しかし少なくとも首脳レベルでの必死の外交交渉が行われなければならない。その事を一番必要としているのは日本だ。北朝鮮のミサイル発射で危険にさらされるのは日本だけだ。その日本がなす術がない。メディアもその事をまったく報道しない。
 報道される事といえば、北ミサイル破壊命令を閣議を経ずして発令するとか(3月24日東京)、秋田、岩手に迎撃弾を配置する(24日朝日)とか、制裁措置を強化する国連決議をめざして奔走する、などという強硬姿勢ばかりだ。ピント外れもはなはだしい。
 考えてもみるがいい。ミサイルが一端発射されてしまったらどうするつもりだ。迎撃ミサイルを撃たなければ弱腰と批判される。撃って当たれば戦争だ。撃って外れれば迎撃ミサイルが無用であるとばれる。ミサイル発射後に制裁措置を強化してみたところで後の祭りだ。
 3月末に予定されていた麻生首相の訪中が中国側の都合で延期された。その一方で米中はオバマ・胡錦涛首脳会談を4月1日に行なうと発表している(3月24日毎日)。日本はと言えば斎木アジア大洋州局長レベルの会談でお茶を濁している。日本最大の外交、防衛危機に際して、外交がまったく機能していない。それどころか日米同盟が機能していない。その事に対して誰も問題にしない。メディアが指摘しない。
日本だ。

 世の中の不正に異を唱え始めた官僚OBたち
―3月25日発行メルマガ第0115号要旨

 サンデー毎日4月5日号の岩見隆夫の「サンデー時評」に私の目は釘付けになった。
 その記事は、元最高裁判所福田博判事の新著「世襲政治家がなぜ生まれるのか? 元最高裁判事は考える」(日経BP社)を紹介しながら、福田氏が「一票の格差」問題で最高裁大法廷の多数意見に異を唱えている事を私に教えてくれた。

 福田博元最高裁判事は私が仕事の上で最も深くつきあった外務官僚の先輩である。駆け出しの頃の直接の上司であり、マレーシア日本大使館公使の時は特命全権大使として文字通り直属の上司であった。
 福田博氏は東大法学部を卒業して外務官僚となり、中曽根首相秘書官、条約局長、外務審議官を経て最高裁判事を10年間務めた人物である。外務次官や駐米大使にこそなれなかったが、つねに外務省の中枢のポストを歩み続けた自他共に認めるミスター外務省でであった。
 その福田氏が、選挙制度の欠陥を指摘し、それを許し続ける最高裁を次のように
批判しているというのだ。
 「・・・選挙区割りとか議員定数は議員立法で改正されることが多いが、改正に
かかわるのは当選した議員たちだ。そうした議員立法を最高裁判所は「国会の立法権の裁量の範囲」として認めてきた。その結果、有力議員の選挙区割りが変わる事は現実には起こらない。地盤は極めて安定し、引退する時は後継ぎとして二世、三世、四世議員がどんどん出てくる・・・世襲議員には、明らかに勉強不足、資質欠如、経験不足・・・が少なからずいます。それは、日本の進路を的確に決定できる能力のある政治家の層が薄くなっていくことに結びつく・・・」

 元最高裁判事が、違憲判断を避け続けてきた最高裁を批判し、歴代の首相の殆ど
が世襲議員であるこの国の進路を憂う、これは紛れもなく驚愕の書である。日米同盟の正体を暴いた元外務官僚の孫崎享氏といい、この福田博元最高裁判事といい、官僚人生の真ん中を歩いてきた人たちが政府中枢の政策や判断を公然と批判するようになった。いままでには考えられなかった事だ。何かが変わり始めている。

 ミサイル防衛は「荒唐無稽な愚挙」
―3月26日発行メルマガ第0116号要旨

  私は何度でも書く。ミサイル迎撃システムという聞き慣れない言葉でも、これだけ連日に報道されるようになると、どんなに軍事に素人の国民でも、これが茶番だということに気づかされたに違いない。
  「ミサイル防衛は荒唐無稽な愚挙」という表題の言葉は私の言葉ではない。月刊誌「選択」09・2月号の記事の表題である。その記事は米国の専門家や政府関係者の発言を引用しながら、ミサイル防衛システムはいまだ「実戦」には役に立たないと書いている。
  そして、それを実戦に使える完全なものにする為にはさらなる開発が必要だが、費用対効果の観点からオバマ・バイデン政権は予算を優先的にまわすつもりはない、と書いている。米国に言われるままに唯々諾々とミサイル迎撃計画を進めてきた日本は、この米国の現実をよく考えろ、と書いているのだ。
その「選択」の記事の中で引用されていた専門家の一人にフィリップ・コイル三世国防情報センター上級顧問(元米国防次官補)という人物がいる。その彼が昨年3月から4月にかけて行なわれた米下院公聴会で行なった証言は驚愕的である。すなわち、国防総省ミサイル防衛局は、完成品が満たすべき要件を定めないで試行錯誤の兵器を実戦配備しているというのだ。配備しながら改良しており、日本もそのような中間品を高額で買わされながら実験につきあわされていると、次のように証言したという。
 「間取り図面が絶えず変更される家を建築しているようなものである。非常に高くつく家になるし、出来上がってみると滅茶苦茶なものになっているだろう」
  そのフリップ・コイル三世に産経新聞ワシントン支局長有元隆志氏がインタビューをしていた。そのインタビュー記事が3月26日の産経新聞に掲載されていた。コイル氏は言う。
  「ロケットでも弾道ミサイルでも打ち上げ当初は見分けがつかない。1分後ぐらいにロケットとミサイルでは上昇角度が変わってくる・・・早期警戒衛星は発射を探知できるが、夜間や悪天候では感度は高くない。より性能の高い宇宙空間赤外線システム衛星などの配備は計画が遅れている・・・(日本のイージス艦が)迎撃するとは想像ができない。イージス艦による迎撃の問題点はミサイルの速度が遅いことだ・・・このシステムはもともとイージス艦自身やその周辺を防御するために開発されており、迎撃可能範囲は狭い・・・迎撃するには飛行するミサイルの近くにいないといけない・・・これまで14回迎撃実験を行い7回成功したが、過去6回の実験では4回は失敗だった。20回以上実験に成功しなければ、MDが効果的という事にはならない・・・発射に失敗し回転しているミサイルの一部を迎撃する実験はいまだ実現していない・・・」

   要するにミサイル迎撃は役に立たないという事だ。それでも麻生首相は「破壊措置命令」を閣議決定せざるを得ない。北朝鮮がミサイルを発射したのに指をくわえて何もしないわけにはいかないからだ。ここに日本の安全保障政策の欺瞞がある。

2009年3月27日発行 第0117号

 孤立する日本の対北朝鮮ミサイル外交
―3月27日発行メルマガ第0117号要旨

 これを書いている今、政府は安全保障会議を開催してミサイル迎撃命令を決定している頃だろう。それが今日のニュースに仰々しく報じられることになる。
 私は安全保障会議をお膳立てする内閣審議官だった(1988-90年)。その経験から、安全保障会議なるものがいかに空疎なものかを知っている。すべては官僚たちがお膳立てし、総理以下関係閣僚はそれに従って発言して終わりである。そこには何の議論も無い。

 問題はそのような官僚主導のこの国の政策決定の実態だけではない。大騒ぎしているのは日本だけだという現実である。日本以外の世界のどの国も、北朝鮮が今回ミサイル実験をしたところで自国に危険が及ぶなどという事はない。だから世界は大騒ぎしないのだ。
 しかし米国はそうであってもらっては困る。米国は、日本と安全保障条約を締結し、日本を守る立場にあるはずだ。日本の危機を自らの危機と受けとめて深刻に対応しなければウソである。
 ところが、その米国が、言葉とは裏腹に、本気で北朝鮮のミサイル実験阻止に動こうとしていない。
 ニューズウィーク日本版の3月25日号は「核の脅威」の特集号を組んでいた。そのなかで、米核戦略の専門家であるグレアム・アリソンハーバード大学教授が次のように語っている箇所があった。
 「・・・ロバート・ゲーツ国防長官は最近、『テロリストが核兵器を手に入れる』ことを想像すると眠れなくなると語った・・・」
 この言葉が今の米国の安全保障政策のすべてを物語っている。米国は北朝鮮の核保有を問題にしているのではない。北朝鮮の核がテロリストにわたることを問題にしているのだ。逆に言えば北朝鮮との間でテロ対策の合意ができれば、北朝鮮がどんなにならずもの国家であろうが許すのだ。リビアの例がそれを証明している。
 周知のように米国の対北朝鮮核政策は猫の目のように変転してきた。クリントン政権の融和政策に懲りた米国は、6カ国協議の場を提案して共同責任で北朝鮮の核保を阻止すべく強硬姿勢をとった。北朝鮮の核保有が避けられないと見るや北朝鮮との直接交渉に変節し、北朝鮮とシリア、イランとの間の核協力を断ち切る戦略に切り替えた。
 北朝鮮のミサイル危機が露呈したものは、単に日本のミサイル防衛の無力さだけではない。日本外交の無力さ、情報不足さもまた明らかにした。何よりも日米同盟関係の欺瞞を明らかにしたのである。

 佐藤優が語る外務省の内幕―田中真紀子追放劇
―3月27日発行メルマガ第0118号要旨

  最近の週刊誌、雑誌で、佐藤優の二つの外務省批判を見つけた。それを二回にわけて解説する。その第一回目は、発売中の週刊文春4月2月号に出ていた田中真紀子追放劇の内幕である。
田中真紀子と鈴木宗男は、外務官僚がもっとも警戒した政治家であった。使い道がなく危ない言動ばかりしていた田中真紀子外相(当時)は一日も早く排除しなければならない存在であった。田中真紀子と違って鈴木宗男は利用価値があった。人事権を振り回して恫喝したり、外交に口出しする鈴木宗男は、外務官僚にとっては恐れられる存在であったが、同時に鈴木宗男は外務省の予算獲得や権限拡充という組織防衛には役立った。鈴木宗男に取り入る不利をして出世競争に利用するという点で使い道はあった。さんざん利用した後で、邪魔になった頃に追い出せばいい。毒をもって毒を制した後に、すべての毒を排除する。これが田中真紀子追放劇の内幕であった。
  週刊文春4月2日号で佐藤優が語っている以下のごとき田中真紀子追放劇は当事者である佐藤しか知らない貴重な情報である。私にとっては、ついこの間まで一緒に仕事をしていた先輩、同僚たちの卑劣な動きを思い出させてくれるドラマの再現でもある。
 平成13年(2001年)5月、佐藤優は当時の事務次官である川島裕に次官室に呼ばれてこう言われたという。
 「婆さん(田中真紀子)は外交には関心がない。興味があるのは、機密費問題で外務省を叩くことと、人事だけだ」
 田中真紀子の事を「婆さん」と呼ぶのはいかにも川島次官らしいもの言いだ。その川島次官は同年6月に赤坂のTBS会館地下の「ざくろ」で鈴木宗男と密かに会って、「田中外相では外交ができなくなります。外務省を守ってください」と頼み込んだという。
 「ざくろ」は外務省が会食でよく使う場所だ。もちろんその食事代は機密費から支払われる。
そして佐藤優は、田中外相攻撃を依頼してきた幹部がもう一人いた事を鈴木宗男から聞かされる。
 「おい、佐藤さん。飯村(豊)官房長が来て、田中外相をやっつけて下さいと言うんだ・・・」
 飯村官房長は私の同期の一人である。同じく私の同期である谷内正太郎や田中均と次官ポストを争った功名心の強い男である。川島次官の片腕として外務省を守る事によって自らの生き残りを図ったのだ。
 田中真紀子は翌2002年1月に外相を更迭される。知りすぎた鈴木宗男が邪魔になった外務省は、今度は鈴木宗男バッシングを始める。その時の情景を佐藤は次のように再現してみせる。
  「鈴木さんとの関係でキミが一番苦労しているのだから、(今度は)鈴木批判に回れ」
 私にこう持ちかけてきたのは、ほかならぬ飯村氏でした・・・
 いかにも飯村が言いそうな事だ。卑劣さを絵で書いたような言動だ。

  佐藤優が語る外務省の内幕―小沢政権誕生を恐れる外務官僚
―3月28日発行メルマガ第0119号 全文

 発売中の月刊誌「新潮45」の4月号に佐藤優でしか書けない外務官僚の困惑ぶりを見つけた。外務官僚は小沢政権の誕生に恐れおののいているという。
 今年の2月末、佐藤優は全国紙(朝日新聞と思われる)の記者から次のような話を聞いた。

 「自民党から民主党に政権交代があっても、外交はわれわれ専門家が行うので変化はない」
 そううそぶく外務省幹部にその記者はこう言った。
 「そうかな、認識がちょっと甘いんじゃないですか。鈴木宗男さんは、民主党と選挙協力をしているんですよ。民主党政権になれば、鈴木さんが外務副大臣になって戻ってくるんですよ。それが政権交代というものです」
 それを聞いたとたん、その外務省幹部は震え上がったという。
 この話を聞いた佐藤優は3月初旬のある夜、鈴木宗男とゆっくり話す機会があったので、鈴木宗男にその事を確かめたという。そうしたら鈴木宗男は次のように答えたというのだ。
 「本気だ。3ヶ月でもいいから、俺は外務副大臣になって、徹底的に人事を行なう。無駄なカネと部局を全部カットする。俺は外務省の連中に言われるままに予算や定員をつけた。それが国益のためになると考えたからだ。しかしそれは間違いだった。その罪滅ぼしだ・・・
  それよりも俺はもっと面白い事を考えている。田中真紀子先生と手を握ろうと思うんだ。そして田中先生と二人で、外務省の機密費に手をつける・・・」
 佐藤優はその記事の最後にこう書いている。
 「・・・機密費問題をめぐる真実や、外務省の『隠れた財布』になっている国際機関(拠出金)についての真実が表に出れば、背任や横領を構成する事案が山ほど出てくるであろう・・・」
 実はその通りなのである。外務官僚がもっとも恐れている秘密なのである。外務官僚が小沢政権誕生を心底恐れるわけである。外務官僚はどんな手を使っても小沢政権誕生を阻止しようとするだろう。
 おりしも小沢代表の続投をめぐって壮絶なバトルが繰り広げられている。その帰趨は、単に小沢一郎の政治生命や民主党の政権交代がかかっている問題にとどまらない。国民から隠されてきたこの国の権力犯罪が明るみにされるかどうかの瀬戸際なのである。官僚支配と国民主権の最終戦争なのである。

 国際原子力機関の事務局長選挙に勝てなかった日本
ー3月28日発行メルマガ第0120号要旨

 北ミサイル実験問題で大騒ぎの中で、見落とされている重大な外交失態がある。それは27日にウィーンで行なわれた国際原子力機関の事務局長選挙に日本が勝てなかった事である。
 あのイラク攻撃の時、核査察を巡って重要な外交的役割を果たしたエジプトのエルバラダイ事務局長が11月に退任する。その後任を決める重要な選挙である。おりから北朝鮮やイランの核開発問題が国際政治の最大の課題として浮上してきている。このポストはますます重要な役割を担うこととなる。外務省は何としてでも手にしたかったポストである。
 外務省はこの選挙に勝って権威発揚を狙うべくあらゆる方策を重ねてきたに違いない。決して有力ではない南アフリカ代表との一騎打ちとなった今回の選挙でははやくから優勢が伝えられていた。それが勝てなかったのである。これほどの失態はない。
 なぜ勝てなかったのか。日本の候補者である天野之弥(ゆきや)在ウィーン日本政府代表部大使とうい外務官僚に魅力がなかったというばかりではない。日本という国が、開発途上国から先進国代表とみなされ、原子力利用をめぐる先進国と開発途上国の対立の壁を乗り越えられなかったからだ(28日読売)。
 なんという情けないことだろう。唯一の被爆国として核拡散、核廃絶を訴える立場にある日本が開発途上国の支持を得られなかったのである。先進国の片棒を担いでいると警戒されたのである。
 この敗北は、これまでの日本外交の正体を浮きぼりにさせた。途上国に対してはカネをばら撒いて済ませる。本気で途上国の為の外交をする気は無い。その一方で、顔は常に先進国に向いている。その中でも、最後は米国の意向を最優先する。それよりも何よりも、唯一の被爆国である日本が米国に従属するあまり、非核政策を本気になって世界に示そうとしてこなかったのである。これでは世界の信頼を得られるはずはない。

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