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2009年01月18日

 正義のない状況下で何を誇りに生きるか


 1月18日の朝日新聞「耕論」に、パレスチナ問題の解決に関する三者の意見が並列されていた。

 駐日イスラエル大使の意見と、パレスチナの二大派閥である穏健派ファタハと過激派ハマスの両代表の意見、この三つである。

 断わっておくが、パレスチナの武装抵抗組織はハマスとファタハだけではない。もっと過激な抵抗組織もいくつかある。

 しかも過激派と穏健派という言葉で単純化する事は誤りだ。そもそもイスラエルの占領に抵抗しないパレスチナ人などいない。

 穏健派といわれている今のファタハの議長であるアッバスの前任は、あのアラファトだ。米国とイスラエルはそのアラファトをテロリストと決めつけてラマラに幽閉し、病死させてしまった。わずか4年ほど前の2004年11月のことである。

 そういう国際政治の偽善を知った上でパレスチナ問題を論じるべきであるのに、メディアは単純化して報じる。それが多くの無知な国民の目を曇らせる事になる。

 「耕論」の三論並立もその危険をおかしている。対等でない立場の者たちの意見を対等に扱うこと自体が間違いなのである。

 しかし、そうは言っても、何も知らない読者に最低限の知識を与える為には、それぞれの立場を伝える必要がある。それもメディアの重要な役割である。

 そう前置きした上で、朝日新聞「耕論」で「紹介」されている三者の意見を私なりに紹介しよう。一言で要約すれば、こういうことだ。

 駐日イスラエル大使の言い分はこうだ。ユダヤ国家を地図から抹殺しようとしているイランの支援を受け、過激なイスラム国家をつくろうとしているのがハマスだ。そのハマスの攻撃からイスラエルを守るのは当然だ。その為にはあらゆる行動が正当化される。

 「穏健派」ファタハ代表の言い分はこうだ。ハマスは我々の勧めを無視して停戦を延長せず、イスラエルに攻撃の口実を与えてしまった。独立国家の樹立を許さないイスラエルの占領政策を、米国やそれに従う国際社会が支えてきた結果、民衆の絶望に巣くう狂信的組織を強めてしまった。しかし中東最強のイスラエル軍に勝てるわけがない。

 「過激派」ハマスの代表の言い分はこうだ。ハマスは占領から解放するための抵抗運動をしている。占領を続け、無実の市民を殺しているのはイスラエルだ。なぜハマスがテロ組織でイスラエルがテロ組織ではないと言えるのか。イスラエルが圧倒的な兵力で不当にガザを攻撃し続ける限り、パレスチナ人には抵抗する理由がある。

 偶然にも同じ日の朝日新聞の書評欄で星野博美という写真家・作家の言葉をみつけた。星野氏は若桑みどりの「クアトロ・ラガッツィ」(集英社文庫)という本と飯嶋和一の「出星前夜」(小学館)の二冊の本を紹介してこう書いていた。

 「クアトロ・ラガッツィ」はイエズス会によりローマへ送られた天正少年使節団が帰国した時、待っていたのは、他の文明や宗教を排除する鎖国に向かっていた日本による弾圧だった、という本であり、「出星前夜」は天草・島原の乱をテーマにした歴史小説だという。
 そこに描かれているのは抵抗運動の末になぶり殺されていった一人一人の無名の人間の生きざまであるという。

 そして評者星野博美氏はこう締めくくっている。

 「正義が行われない絶望的な状況下、人は何を誇りに生きていくのか。もしそんな状況に(自分が)置かれたら、どんな行動をとるだろう。自分の生き方を問われているような気がする・・・なぜ(私が)これらの本を欲していたのか、最近やっとわかってきた。弱肉強食の時代に戻りつつあることを実感し始めた今だからこそ、何に希望を見出したらよいのか、ヒントを探したくなった・・・」

 パレスチナ問題は遠い世界のことではない。私たちの身の回りに無数に存在する絶望的な不正義、不条理を前にして、自分はどう生きていくべきか、その悲しいまでの根源的な問いを、幼い子供達が流す無辜の血と涙とともに、私たちに問いかけているのである。

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