12月6日の東京新聞に、一段の小さな記事で、航空自衛隊のイラク空輸部隊の活動状況に関する報道がなされていた。
12月5日に、あの田母神前幕僚長の後任者である外薗健一朗航空幕僚長が記者会見で明らかにしたという。
この記者会見の模様は他の新聞には報じられなかった。
東京新聞の記事も虫眼鏡で見なければ見落とすような小さな記事だった。
そしてその内容は次のような乏しいものだ。
「・・・2004年3月から始まったクウェートとイラク間の空輸は815回行なわれ、人員4万6千人、物資671トンを運んだ。人員の内訳は(幕僚長は)明らかにしなかったが、06年に撤収した陸上自衛隊5千5百人往復利用したと仮定すると、残りは3万5千人。安倍晋三元首相の昨年の国会答弁をもとに国連職員の割合を差し引くと、残り約3万人は米軍中心の多国籍軍だったことになる・・・」
なぜ幕僚長は空輸した内容のすべてを明らかにしないのか。
なぜ東京新聞が仮定の計算をして記事にしなければならないのか。
こんないい加減な形の記者会見ひとつで、自衛隊のイラク派遣を終わらせてはいけない。
胸に手を当ててよく考えてみるがいい。
自衛隊のイラク派遣は、戦後初めて自衛隊が重武装して戦地に赴いた一大政治問題であった。
イラク戦争が始まり、小泉元首相のブッシュ追従による陸自のサマワ派遣が強行されたとき、一大論争となって日本中を揺るがした。
給水活動が終わり、やる事がなくなったうえに危険になったので、陸自のサマワは撤退した。
それと交替する形で始まったのが自衛隊の空輸活動であった。
対米協力の証を示すために。
その空輸活動は、今年4月の名古屋高裁判決で違憲と断じられた。
日本政府の憲法解釈に立ったとしても、そしてイラク派遣法が合憲であるという日本政府の立場をとったとしても、どう考えても「戦闘地域」における「戦闘行為」への加担である、違憲、違法である、と断じられた。
在日米軍基地の違憲性や自衛隊の違憲性についての地裁判決は過去にもあった。
しかし自衛隊の海外派遣という政府の政策が違憲であると断じられた事は初めてだ。しかも高裁という上級裁判所による判決で。これは極めて重大な判決だ。
その空輸活動が11月28日の政府の航空自衛隊撤収命令によってすべて終わる事になる。
空輸部隊の撤収により、5年越しの歴史的な自衛隊イラク派遣はすべて終わる。
次はアフガンとかソマリア沖などと言われているが、そうなるかはわからない。なるとしても先の話だ。
とにかく、イラク派遣はこれで完全に終わるのだ。
イラクが安定したから終わるのではない。
米兵撤退の決断はオバマにも引き継がれる。オバマさへも撤収の決断は容易にはできない。
イラク情勢は不透明であるからだ。中東情勢は不透明であるからだ。
なによりも「テロとの戦い」が終わりそうもないからだ。
それにもかかわらず自衛隊のイラク派遣が終わる。
それはイラクが安定したからではない。
顔をたてた米国のブッシュ大統領がまもなく退陣するからだ。
ブッシュ大統領には十分尽くした。そしてオバマ政権からのイラク派遣圧力はない。
結局日本政府の自衛隊イラク派遣は、イラク情勢とは関係なく始まり、イラク情勢とは関係なく終わるのだ。
このような自衛隊のイラク派遣を、自衛隊幕僚長の記者会見一つで、しかも内容を隠すような記者会見で終わらせていいはずはない。
日本政府は政府としての評価・報告を国民の前に提示すべきだ。
財政危機の中で国民生活に必要な予算が軒並みに削られる中で、野党は、イラク派遣に使われた血税の総額と、その使途の適切さにつき、詳細な説明を政府に求めるべきだ。
国民はそれを政治に求めるべきだ。
メディアは、国民に代わってイラク自衛隊の評価の報道を行なうべきだ。
12月23日に、自衛隊イラク派兵訴訟を行なった関係者たちが名古屋に結集して、航空自衛隊の帰国にあわせてその評価を行なう。
めったに行動をしないものぐさで身勝手な私でも、この集会だけは参加しようと思っている。
帰国する航空自衛隊部隊に伝えたいからだ。
任務を終えて無事に帰ることが出来てお目でとう。ご苦労様。
しかし、本当に充実した仕事をしてきたのか。
日本の為だったのか。イラク治安に役立ったのか。血税を使うに値する仕事だったのか。
それを一人一人に聞いてみたいと思っている。