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2008年10月25日

ポール・サミュエルソン教授の言葉


 10月25日の朝日新聞に経済学者ポール・サミュエルソンのインタビュー記事が載っていた。

 なつかしい名前だ。

 もう40年以上も昔の話になるが、その著書「経済学」を、大学生になったばかりの私は教科書の一つとして読んだ。

 その内容はすっかり忘れたが、その後まもなくノーベル経済学賞を受賞したサミュエルソンの名前は、ケインズの名前とともに、いまでも鮮やかに蘇る。

 今はマサチューセッツ工科大学名誉教授である今年93歳となるポール・サミュエルソン教授は、朝日新聞編集委員の小此木潔氏インタビューに、現下の金融危機について述べている。

 かつての教科書の先生の言葉として、私はこれを学生時代にもどってなるほどと思って読んだ。

 そのさわりの部分を以下に紹介してみる。

 ・・・今回の危機は大恐慌以来、最悪の危機であることは間違いないが、これは避けられた危機だ。ブッシュ大統領がクリントン大統領から政権を引き継いだとき、経済は健全であり、財政は黒字ですらあった。
    ブッシュ大統領が掲げた「思いやり保守主義」は、億万長者を作り出すには役立ったが、中流以下の人々には優しくなかった。その結果、米国の人々の生活は厳しさを増した。
    イラク戦争と並んで、これがブッシュ大統領の不人気の理由であり、米国の歴史において最悪の大統領として名をとどめることになるだろう・・・
    「億万長者への思いやり」とは、たとえば証券取引委員会(SEC)の委員長に、能力が低く利益相反の危険がある人物をわざと採用して、市場への監督と規制を緩くしたということだ・・・
    「悪魔的でフランケンシュタイン的怪物のような金融工学」が危機を深刻化させた。そのもとで、信じられないほど激しいレバレッジが横行した。人々は自分が何をしているのかがわからなくなってしまっていたのだ。
    グリーンスパン議長が95年ごろからはじまった株式市場のバブルに対策を講じなかったことも、惨状を招いたひとつだ。
    これらの背景には、81年に就任したレーガン大統領が力を注いだ「右傾化」がある。
    我々が「極右サプライサイド(供給重視)経済学」と呼ぶ路線をとった。それが、「悪い規制緩和」や「無能な人物の登用」といったブッシュ路線に引き継がれた・・・
    この危機を終わらせるためには何が有効なのか。それは「赤字をいとわない財政出動」だ。極端に言えば、紙幣を増刷してばらまくような大胆さで財政支出することだ。
    大恐慌を克服したのは戦争のおかげだという人がいるが、そうではない。当時私はシカゴ大学の学生だったが・・・周囲では3人に1人以上が失業していた。それほど高かった失業率を一桁まで減らしたのは33年に就任したルーズベルト大統領の政策だ。それは戦争前のことだ。
    ルーズベルトがとった政策は、赤字財政であっても、公共事業や農業支援計画を通じた巨額の支出だった。それが資本主義を救った・・・
    戦前のフーバー大統領は、ケインズをマルクス主義者呼ばわりするような人物で、恐慌克服になんら有効な手を打っていなかったことが響いた・・・
    現在の危機は米国民の生活を脅かしており、来月の米大統領選挙に影響を与えるのは確実だ・・・米国政治における民主党の歴史的復権が実現する。これはレーガン時代以降続いた共和党主導の政治を大きく変えることになる。ブッシュ政権の大きな失政を機に民主党優位の時代がはじまる・・・
    しかし、現在の危機が解決したとしても米国の将来はなお厳しい。レーガン政権が誕生した81年ごろから続いてきた経常収支の巨額の赤字が、10年後には一段と深刻な問題になってくるのではないか。
    懸念されるのは、ドルからの逃避、それも無秩序なかたちの逃避がおこるのではないか。それが起こったときには、外国人が米国市場から資金を引き揚げるだけでなく、米国のヘッジファンドが先頭に立ってドルを売り、外国通貨を買う事態になってしまうだろう。
    もっとも、今は家が火事になっているような時だから、そんな先の心配をすべき場合ではないのだが・・・

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2008年10月25日

誤りを認めたグリーンスパンとグリーンスパンを謝らせた米下院公聴会

 
 このところ経済関係の報道は世界金融危機一色だ。

 それほど深刻な事態ということだ。

 しかし、その危機は突然起きたものではない。

 もとをたどればレーガン時代の新自由主義、いわゆるサプライサイドの経済政策から端を発していた。

 そして、ブッシュ大統領の8年間の富裕層に優しい保守主義こそ、今日の金融危機への行き着く先であった。

 皆が漠然とした不安を感じならが、儲けに乗り遅れまいと走ったのだ。

 そんな中で、その流れに逆らう言説を言う事は勇気のいる事だ。

 たとえ警告を発しても異端視されるのがオチだっただろう。

 そうだ。今の金融危機は皆がもたらしたものなのだ。

 それに、危機が現実となった今となっては、その対策を考える事が最優先さるべきだろう。

 責任者は誰だ、そいつを罰しろ、と叫んでみたところでむなしい。

 それはその通りである。

 しかし、同時に、真の再生の為には、何が誤りだったのか、その責任の所在を明らかにすることはやはり重要であろう。

 23日の米下院公聴会で、もの凄いやり取りがあった。24日の産経と朝日が詳しく報じている。

 ワックスマン委員長(民主党)が、18年半という史上最長の任期をつとめたグリーンスパン前FRB議長に対し、「金融市場の規制緩和の支持でもっとも影響力があったあなたは、間違っていたのか」と容赦ない質問を浴びせた。確答をさけるグリーンスパンに、最後は「イエスかノーか」と詰め寄った。

 そしてグリーンスパンはついに次のように自らの誤りを認めたのだ。

 「金融機関が自己利益を追求すれば、株主を最大限に守ることになると考えていた。私は過ちを犯した」

 グリーンスパン一人の責任にするのは酷だろう。

 大統領選挙を控え、彼がスケープゴートにされたという側面もあるかもしれない。

 しかし、やはり彼は最大の責任者の一人であることは間違いない。

 それにしても、と思う。

 金融政策のマエストロ(巨匠)と異名をとった米経済界の重鎮が、その老体を前にして、それまでの名誉をかなぐりすて、ここまで潔く自らの誤りを認めるとは。

 その一方で、その重鎮をここまで追い詰めることのできる米国議会の公聴会と、つねに追及不足、消化不足のわが国の国会質疑の、彼我の違いの大きさはどうか。

 今からでも遅くない。国会は小泉5年半の経済政策の責任を国民の前で徹底的に検証すべきではないのか。

 野党が政権交代を本気で求めるのなら、この金融危機を前にして、今日の日本の経済困窮をもたらした小泉改革の徹底検証こそ、最強かつ最善の選挙対策に違いない。

 

 

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