起業して貧困を救うという発想
起業して貧困を救うという発想
生涯一官僚であった私に起業を語る資格はない。しかしアイデアをたくましくする事は出来る。
かねてから私には一つの夢があった。起業に成功して大金持ちになった連中の中から、一人でもいいから、その富と成功体験を弱者や貧困者に分け与え、ともに新たな起業に向かって挑戦するような人物が出てこないかと。
3日の朝日新聞を読んで、そのような夢を実践している人が現実に存在する事を知った。
「人」欄で紹介されていたジャクリーン・ノボグラッツさん(46)がその人だ。ベンチャー投資ファンドで事業を成功させ、途上国の貧困層を支援しているという米国女性経営者である。2月上旬に来日していたという。
住友化学が開発したマラリア蚊を防ぐ蚊帳が今、タンザニアの工場で年間700万枚作られ、5千人の新規雇用を生み、世界で年3億人が感染するマラリア予防に役立っているという。元銀行ウーマンの彼女は、ファンドを設立し、100万ドル(約1億円)の投資を行ってこの事業を可能にしたという。
彼女の次の言葉が気に入った。
「一万人を寄付で救うより、市場を活用して100万人の人生を変えよう」
この呼びかけに呼応した若い実業家たちが、南アジアやアフリカで既に27の事業に、合計3千万ドル(約30億円)以上注ぎこみ、延べ1千万人の健康や収入に貢献してきたという。
「彼らは単なる資金の受け手ではない。自らの夢と尊厳を持っているのです」
私の夢はもっと現実的である。事業活動は何も人道的な事業に限らなくてもいい。金儲けを求める事業でもいい。起業に成功したものが、手にした資金を自分だけのために使うのではなく、他者の起業チャンスのために分け与えるのだ。
その資金で成功したものがまた、その儲けをお返しし、あらたな起業チャンスづくりに貢献するのだ。
人間は好きなことならやる気をだす。人に命令して働くだけではなく、自分の手で何かを達成する自主性を与えられれば勤労は喜びに変わる。そのうえ金儲けできればこんなに楽しい事はない。夢のある人生はない。
そういえば起業に成功したある若者が宇宙旅行に使う金が30億円ぐらいであった。自分で手にした金を何に使おうが勝手だが、その金を若者の起業チャンス育成のために使おうという発想をもつ成功者が、出てこないものか。皆が勝ち組になる社会はありえないのだろうか。