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2007年06月02日

格差社会の出現と財界人、労組幹部の責任

 格差社会の出現と財界人、労働組合の責任

 日本経営の三種の神器と言われる①終身雇用②年功序列③企業内組合。この「会社運命共同体」が崩れようとしている。いつのまにか日本経済は株主重視経営、成果主義賃金、雇用の流動化という米国型経営に変わってしまった。もちろん日本型経営には問題もある。しかし格差社会をここまで急速に進めてしまった責任者は確かに存在する。誰かが責任を負わなければならない。
 この日本経済の変化について、朝日新聞が「証言でたどる同時代史」という特集記事で検証している。それを読むと、今日の格差社会の出現の責任は、一人日本政府の責任にとどまらず、財界人、労働組合幹部が等しく負わなければならない責任であると思えてくる。
 5月19日の「証言でたどる同時代史」は財界人の責任について書いていた。その記事によれば日本型経営の転機は、94年2月25日の千葉県浦安市舞浜の高級ホテル「ヒルトン東京ベイ」から始まったという。いわゆる舞浜会議である。そこで大手企業のトップ14名が泊り込み、次のような激しい議論を繰り広げたという。
 
・・・論争の中心になったのが「雇用重視」を掲げる新日鉄社長の今井敬と「株主重視」への転換を唱えるオリックス社長の宮内義彦だった。後に経済界で「今井・宮内論争」と言われるものだ・・・対外発表はされず、世間から注目もされなかったが、経済界にとってはここが大きな節目だった。日本型経営の維持か、株主利益重視の米国型に変えるのか、経営者たちが必死で探っていた時期だ・・・「終身雇用を改めるなら経営者が責任をとって辞めた後だ」。企業共同体論に立って主張する今井に、日産副社長の塙義一らが同調した・・・これに対し「これまで企業が社会に責任を負い過ぎた。我々は効率よく富をつくることに徹すればいい」と宮内が反論。それをウシオ電機会長の牛尾治朗が援護した。「・・・終身雇用・年功序列はもたない」・・・
  そして朝日新聞は、財界人の言葉を引用してこう締めくくっている。・・・経済のグローバリゼーションは日本の経営者たちの予想を超える速さで進んだ。市場重視に変わらなければと思っていたより先に、市場自体がマネーゲームのるつぼになってしまった。結局舞浜が企業も国も漂流を始めた起点であった・・・と。
  本当にそうだったのか。日本の財界人が議論を尽くして日本経済や日本国民の利益を真剣に考えた最善策を講じようと本気で努力したのか。それでもグローバル経済化の速度についていけずに米国資本の犠牲になる事は不可避だったのか。
 政府側に立ったメディアや経済評論家は決して認めようとしないが、世間では日本の政官財が米国の要求に迎合する形で日本経済を米国資本に売り渡したのではないかと指摘する向きがある。その真偽はどうであれ、95年、経済同友会代表幹事になった牛尾は「市場主義宣言」を掲げ、政府の経済財政諮問委員会議の議員となって新自由主義政策を進める小泉内閣の参謀役を務めた。竹中平蔵、宮内義彦、奥田硯といった一握りの財界人が、大きな影響力を行使し、小泉政権の最高政策決定機関である「経済財政諮問会議」に入り込んで日本経済の方針をどんどんと決めて言った。彼らは小泉前首相と同様に強烈な米国礼賛主義者だ。米国の企図する日本経済の解体に、彼らが意図的に積極的に加担していった事はないのか。それが言いすぎであれば、少なくとも彼らは米国の圧力に体を張って日本の大衆労働者の利益を守ろうしなかったのではないか。自己の利益を優先させたのではないのか。
 その一方で6月2日の「証言でたどる同時代史」では、労働組合幹部の証言を引用し、その責任を問うている。鷲尾悦也元連合会長は言う、「・・・企業別組合は自分たちの権益を守るため、会社が(非正規の)安い労働力を入れるのを許してきた。連合がいくら『非正規労働者の組織化』を訴えても、労組役員になると『そうですね』で終わってしまう・・・正直に白状すると、僕らは八幡製鉄所の労働者の苦しさはわかるが、パートや派遣労働者の苦しみは実感としてわからない・・・」。 そして笹森清前連合会長は言う。彼は02年の春闘で「雇用を守るために一定期間はベア自粛だ」という奥田日経連会長(トヨタ自動車会長)に押し切られた時の連合会長だ。「・・・トヨタ自動車会長の奥田さんが日経連会長でいたことが大きかったですね。日経連会長の立場でトヨタの交渉に介入したというならゆゆしき事だと思う。当時、経営者たちは労組側の統一ベア要求に対して『横並びの時代じゃない』と言って攻撃してきた。トヨタのベアゼロを受けて、どこの企業も自社の賃金抑制に悪用したんです・・・日本の労働運動の特徴は実働部隊が『企業別組合』だということ。その上に(連合という)ナショナルセンターを乗せたが、連合そのものには団体交渉権はない。これでも成長している時代は企業別協議で答えを出せた。それにあぐらをかいた。居心地がよすぎたんだろうな・・・」。労働者が組合から離れていくのは当然であるような気がする。
  日本経済をここまで崩壊させたのはグローバリゼーションという名の日本の米国経済化であり、その要求にやすやすと迎合した日本政府の責任である。しかしその日本政府に協力したのは財界幹部であり、それとなれあったのが労組幹部ではなかったか。今日の格差社会の責任は、この国の指導者のすべてにある。

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2007年06月02日

権力欲に利用され続けた日米同盟関係

権力欲に利用され続けた日米同盟関係

  私の基本姿勢は、繰り返して書いて来たように、「事実にすべてを語らせろ」ということである。下手な推測に基づいた凡百の政治論評よりも、一つの事実が真実を教えてくれる。
 西山太吉著の「沖縄密約」(岩波新書)を読んだ。あの沖縄密約をすっぱ抜いたため余罪で犯罪人とされた元毎日新聞の政治記者、西山太吉氏の最新著である。これを読んだ私は、この書が、彼がその生涯をかけて書いた鎮魂の書である事を知った。それはまた真実を暴こうとしたために国家権力から人生のすべてを奪われた一人の国民の心の底からの叫びである。

 この中で、何よりも私が衝撃を受けたのは、「この国の対米追従外交の根源が、権力者の政権維持のあくなき欲望から由来している」という事実をあらためて知ったからである。これこそが私が確認したかった日本外交の病理である。外交が、国民の為ではなく、自分の名誉欲と権力闘争の具として使われている。権力者の浅ましさに怒りで身が震えるほどだ。
  西山が糾弾したのは45年前の佐藤栄作の沖縄密約外交である。私にはそれが小泉前首相の対米従属外交にダブって見える。いずれ時がたてば5年半の小泉対米従属外交の真実が明らかにされる日が来るであろう。その時は小泉元首相も私もこの世にはいないかもしれない。しかし誰かがいつかそれを白日の下にさらさなければならない。その時は、佐藤元首相が沖縄返還交渉に見せた執念とその理由が、決して沖縄県民のためではなく、己の個人的な権力欲の所産でしかなかったと同じように、自らの5年半の政権保持の為に、日本とその国民の将来を米国に売り渡して破壊した小泉外交の正体が明らかになるに違いない。

 西山太吉の語る沖縄返還の本質を要約すると次の通りである。

・・・佐藤が沖縄返還にこだわったのは池田への激しい対抗意識からであった。鳩山の日ソ共同宣言、岸の安保条約改定、池田の日韓国交正常化の後、残る戦後処理案件は日中国交回復、北朝鮮問題、北方領土問題、沖縄返還問題であった。このうち領土問題は急に打開される状況にはなかった。反共主義者の権化のような佐藤に中国、北朝鮮との国交正常化に本腰を入れることはありえない。残るは沖縄返還しかなった。しかもライバルの池田は、安保改定の政治的混乱を癒すかのように所得倍増、高度成長という経済問題に傾注し沖縄返還には関心を示さなかった。佐藤としては自らの名誉獲得のすべてを沖縄返還に託したのだ。この「偉業」を成し遂げてノーベル平和賞をもらった訳だから、佐藤としてはもって瞑すべしであろう。しかし沖縄返還の実態は、密約までして沖縄を引き続き米軍に「自由使用」させるという「沖縄県民への裏切」でしかなかったのだ。
・・・当時の米国は沖縄の軍事的重要性に鑑みて頑として譲る気は無かった。ましてやベトナム戦争が激しさを増していた時だ。そのような米国が一つの妥協案を出してきた。沖縄返還の裏交渉にあたった若泉敬京都産業大学教授に対し、ロストウ大統領特別補佐官(ジョンソン大統領時の安全保障担当補佐官)が、次の条件を日本が飲めば交渉に応じると提案してきたのだ。
「・・・まず第一に佐藤がアメリカのベトナム戦争について徹底的支持を表明する。次に南ベトナムをはじめとした東南アジア諸国への援助を大幅に拡充する。そして三番目に米国の財政赤字が減少するような諸施策の実施を日本側が積極的に取ること」。これである。
  佐藤は見事にこれに応じた。なかでも佐藤の米国のベトナム戦争を最大限に支持したスピーチは、米国内を含む世界の世論の大勢が反米に向け怒涛のような勢いを見せ始めていた時だけに、異色なものであった。しかしそれだけに、ホワイトハウスの喜びは大変なものであった・・・

  どうだ。この歴史的事実は、イラク戦争を支持してブッシュ大統領を助けた小泉前首相の言動と瓜二つではないか。ブッシュ大統領の日本に対する要求も、それに見事に答えた小泉前首相の言動も、まったく同じだ。ノーベル平和賞を欲する俗物的欲望までもが・・・しかもこの佐藤の沖縄返還交渉をお膳立てしたのが福田赳夫であった。佐藤からの政権移譲を田中と争った福田が若泉に秘密交渉を依頼したのだ。その福田は小泉の師である。小泉は権力闘争に敗れた福田の無念を晴らすべく、総理になってその権力のすべてを田中派閥の政治家つぶしに使ったのだ。

西山太吉はその著の終わりを次のように締めくくっている。

・・・(密約外交という)「情報犯罪」は、納税者、主権者とそれを代表する国会に対して偽計を弄するという点で重大であるが、同時に、国の外交・安全保障の根幹に関わる問題で、政権欲のため(国家)権力を濫用したという点でも厳しく糾弾されなければならない。そしてこの情報犯罪は、私に制裁を科すことによって、隠蔽され、擁護されたのである・・・いま、わが国では、国家への権力集中に拍車をかけながら、特定国(米国)との軍事同盟関係を一体化するという特異な路線が敷かれようとしている。これにともない、メディアの諸活動も各種の規制が加えられようとしているかのようである。今のメディアに要請されるものは、権力に対する監視機能の再構築であり、それはとりもなおさず民衆の側に立って、権力との均衡を回復し、維持することである・・・

これ以上の言葉はない。

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