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2007年03月15日

トヨタは危険な競争相手

トヨタは危険な競争相手

 このブログで一度は取り上げたいと思っていたのであるが、2月28日付の日経新聞が米国自動車産業の重鎮であるロバート・ワッツGM副会長のインタビュー記事を掲載していた。その中で彼はトヨタの事をこう述べているのだ。

「・・・トヨタの利益の大部分は米国から。それは円安に支えられている。米政府は円安への不満を無視しているようだが、欧州は心配し始めた・・・」
「・・・(トヨタを)友人とは考えていない。一番の競争相手。危険な競争相手とも見ている」
「(フォードがトヨタとトップ会談をした事について聞かれ)ムラーリ(フォード社長)はトヨタへの大げさな称賛をやめた方がいい。かつてGMもそうしていたが、やめた。」

 日本では殆ど注目されていないが、このGM副社長の発言は凄い発言である。抑制された言い方をしているが、その裏にはむき出しの敵意が満ち溢れている。この言葉を知って、さぞかしトヨタは震え上がったことであろう。

 なぜ私がこのラッツの言葉を思い出したかというと、今日(3月15日)の日経新聞に、トヨタの奥田碩相談役が、在日米国商工会議所から2006年のパーソン・オブ・ザ・イヤーに選ばれたという記事を目にしたからである。社長、会長時代に工場建設などで米国の雇用機会創出に貢献したことなどが理由だという。これは喜ばしい出来事である。トヨタもこれを素直に喜んでいい。しかし同時に米国という国を決して見くびらないことだ。米国という国は、追い込まれた時は一転攻勢に転じる国だ。その場合は一致団結する国だ。もはやトヨタは今まで以上に米国の顔色を伺わねばならなくなった。米国のほめ殺しで米国に逆らえなくなったのだ。

 私は1997年から2000年までデトロイトの日本総領事をしていた。デトロイトは米国自動車産業のメッカである。そして自動車産業はベースボールと並んで米国のシンボルである。その米国の自動車産業を日本車の輸出急増が脅かした。いわゆる日米自動車貿易摩擦である。日本車が米人労働者によって叩き潰された。これに慌てた日本の自動車業界はこぞって生産地を米国に移し、米国で走る車は米国産とし、地域住民の雇用を向上させ、あるいは資本提携、技術提携を重ねて米国自動車産業との一体化に努めた。その甲斐あって貿易摩擦は沈静化した。

 あれからわずか十年、今日では状況は様変わりだ。北米市場のシェアでトヨタはGMに迫る勢いだ。日本車のシェアはついにビッグ3を凌いでしまった。当時日本車のシェアが3割を超えると「虎の尻尾を踏む」といわれて、「これだけは守ります」と現地の邦人関係者が言っていたのを思い出す。しかしいまでは4割を超えてしまった。

 もはや日本車の優秀性は米国民が認めだした。米国の政治は金融資本に支配され自動車産業の政治力は凋落しつつある。だからかつてのような対日批判はおこらないだろう。そう日本側がたかをくくっていると大変なことになる。冒頭のラッツGM副会長の言葉は、その懸念が懸念でなくなる時が来るかもしれないと警告を発しているのだ。

 米国の怖さを一番良く知っているのは奥田碩相談役その人であろう。日経新聞によれば授賞式の場で、創業家の豊田章男副社長が社長になる可能性を聞かれた奥田氏は、「非常にデリケートな質問で答えられない」と前置きした上で、「21世紀リーダーシップの条件は神の足音が聞ける人。トヨタに何人いるか知らないが、その中から選ぶことになる」と答えて周囲を煙に巻いていたという。

 トヨタにとっては神とは米国のことではないのか。奥田氏は小泉前首相以上の米国支援者なのではないか。だからこそ米国追従の小泉前首相を最後まで支援したのではないのか。今度の受賞はそのご褒美なのではないのか。冗談半分でそう思うのである。

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