【バックナンバー】2005-07-05
予備自衛官とは何だ
7月4日の読売新聞「顔」の欄に、「日米訓練に初参加する民間出身の予備自衛官」という見出しで一人の若い女性が紹介されていた。
米国で国際ビジネスを学び、今は通訳の仕事をしているという30歳のその女性は、「医療や語学、電気などの専門技能があれば、自衛官としての勤務経験がなくても予備自衛官になれる」という制度を知り、「英語で社会貢献できれば」と挑戦したという。
その彼女は、長崎・相浦駐屯地で10日間の集中訓練を受けたという。精鋭部隊として知られる西方普通科連隊が所属するというこの駐屯地で、厳しい訓練をまじかに見せられ、自らも射撃訓練までさせられている。
およそ国防も自衛隊も知らなかった一人の若い女性が、いきなり戦争疑似体験をさせられて、しかもその女性はそれを違和感無く受け入れているようだ。
「アーミールックは好きですが、まさか本物の迷彩服を着ようとは・・・」、「国を守ることの大切さを実感しました」、「射撃は体力が勝負、的に当たったかは内緒」、「多くの人に自衛隊を知ってもらう橋渡し役になりたい」などと新聞紙上で、何のためらいもなく語っているのだ。
現在約430人いる予備自衛官とは一体何なのか。正規の自衛官が集まらないからアメを与えて素人を補充しているのか。それにしては数が少なすぎる。素人過ぎる。自衛隊のイメージを上げるために広告塔の役割を担わせているのか。若い世代に自衛隊への関心を浸透させようとしているのか。そうであれば姑息過ぎる。
それにしても悲しい。この若い女性はどこまで今の自衛隊が米国の指揮下におかれ、米国の戦争に組み込まれているか、知っているのだろう。米兵がイラクでどれだけの命を奪っているのか知っているのであろう。
彼女を責めるつもりはない。ただ悲しいのだ、残念なのだ。私が責めるのは、何もしらない素人の若い女性まで自衛隊の宣伝に利用する政府、自民党、御用新聞だ。その卑劣さに憤りを感じずにはいられない。
情報操作とネットメディア
7月5日の産経新聞に、ライブドアがインターネット上のニュースサイトに日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」と「朝鮮日報」の記事を無料配信し始めたという事が、小さく報じられていた。この記事の意味するところは大きい。
ライブドア社は「政治的立場や地域的視点にとらわれずニュースを提供したい。内容の判断は読者にまかせる」という。ライブドア社は金儲けだけの会社だ。だから話題になる事はなんでもやる。今回の配信も深い政治的考えがあってのことではないだろう。それでいいのだ。主義主張も理想も何もない行動が、結果として革命的な役割の先鞭をつけることだってある。
民主主義の根本は情報公開だ。我々は物事を知る事によって考える。考えれば意見を持つようになる。意見を持つと権力者の不正や悪に怒りをおぼえるようになる。権力者が一番おそれるのはこの事だ。眠れる国民の覚醒だ。だからこそ情報操作をして国民から事実を隠蔽し、国民の考えを誘導しようと必死になるのだ。
世の中は猛烈な勢いでインターネット時代が進展している。インターネット利用者の多くは、政治に無関心、無知な若者だ。彼らの多くは暇で、怠惰だ。しかしその彼らが一旦目覚めると、大挙して動き出す。よかれあしかれ潜在的なエネルギーを秘めている。
国家権力はそこに目をつけている。彼らを警戒すると同時に利用しようとする。すなわちインターネットの書き込みで妨害したり、誘導しようとする。2チャンネルの書き込みが、当初と違って右傾化、政権擁護的になってきているのは、権力者がネットの影響力に気づいて、機密費を使って役人や「さくら」に書き込ませ、世論誘導をはかろうとしているからだ。これはもはや知る人は知っている。実に卑劣な手口だ。
今のところ政府の言論統制はインターネットへは十分には及んでいない。たとえ規制を強化しようとしても、それを潜り抜ける技術はつねに進歩していくだろう。インターネット情報が国民の意識を変える。それが政治を変える。権力者にとってはやりにくい世の中になってきた。徒手空拳の一般市民にとってはこれほど心強い道具はないのかもしれない。ライブドアが権力に潰されないように、ホリエモンには常に国民の支持をバックに言動してもらいたいものだ。
都知事選に見る政治家の言葉
7月5日の東京新聞に谷政幸論説副主幹のおもしろい記事をみつけた。彼は、「選挙戦の傍らで与野党入り乱れて展開されたさや当ては、意外と面白かった」としたうえで、「郵政民営化法案の採決は都議選の後に」と主張した公明党を挑発した共産党書記局長・市田忠義氏のつぎの演説を引用する、
「国民のための正しい法律なら、都議選前に採択したほうが、いい法律が出来ましたよと宣伝できる。それを都議選後にとは、みずから悪法と認めているのと同じだ」。確かにその通りである。
谷副主幹は又、都議選前の採決を自民が断念したあとに言い放った公明党幹事長・冬柴鉄三氏の言葉と、それに対する小泉首相の切り返しの言葉を次のように紹介する。
「当然の話だ。自民党は屈服した」(冬柴幹事長)
「負けるが勝ちって言葉があるしね」(小泉首相)
そしてこのやりとりを谷氏は、「自民公認候補を何人も推してやっている。それなのに何だ。うちに歯向かえないのがわかっただろう」という公明党の本音であるという。そしてあの小泉首相が正面きって反論できず屈服した、もはや「公明党あっての政権」をこれほど印象づけたやりとりはないと述べている。
最後は、自民党幹事長の武部勤氏の次の言葉だ。すなわち都知事選告示直前にサラリーマン大増税を打ち上げた政府税調を叱りつけて、「大事な政治日程の中で出すのは政治的センスがない」と言った。これを皮肉って、「それじゃ、投票後に出せばいいって言うのか」と誰でも思うだろうと解説している。
それにしても次元の低い政治家のやり取りだ。こういう政治家が今の日本で一番権力を持っているのだ。まともな国民なら耐えられないはずだ。
エネルギー覇権と脱石油戦略
7月5日の日経新聞コラム、「大機小機」に米石油大手のユノカルを中国海洋石油が買収しようとしていることについての考察が書かれていた。
すなわち、石油覇権は米国の世界支配の中心課題であるが、その米国の石油覇権に中国が企業買収という形で挑戦している、この大胆さに我々はもっと注目すべきであるというのである。
当然のことながら米国はこの動きに神経を尖らせている。議会の承認が得られるかどうかもまだわからない。しかし企業買収という最も米国的な手法で米国に挑む中国に対し、果たして米国がこれを政治的な理由からだけで拒めるのか。
持続ある経済発展にとって、エネルギー不足は避けられないことを見越した中国は、4日にカザフスタンと石油・天然ガス田の共同開発に合意するなど、国を挙げての資源確保外交に乗り出している。そのためには米国の資源覇権にまでも挑戦しようとしているのだ。これはすごい事だ。見事な外交だ。
我々はどこまで原油情勢の深刻さにきづいているのだろう。泥沼の中東情勢、OPECの手から投機市場に移った価格決定権、中国という強大なエネルギー需要国の台頭などなど。
日経新聞のこの記事は、日本は確信を持って脱石油戦略を突き進めることだと主張する。しかしそれ以前の問題として、日本の石油資源外交そのものが世界の石油争奪戦において無策、無力なのではないのか。郵政民営化や靖国問題といった、およそどうでもいい国内の不毛な議論に明け暮れているうちに、日本はどんどんと世界の石油争奪戦から取り残されつつある気がしてならない。