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2005年05月31日

【バックナンバー】2005-05-31

小泉首相は信念の人か

31日の朝日新聞に、小泉首相の中国に対する姿勢の世論調査結果が出ていた。「評価しない」人が48%であるのに対し「評価する」は35%にとどまり、参拝を「やめたほうが良い」の49%が「続けたほうがよい」の39%を上回ったと、朝日新聞は分析している。
それは正しい分析であるのか。むしろ驚くべきは、「小泉首相の姿勢を評価する」、「靖国参拝は続けるべきである」と答えた人の数が、35%。38%とかなりの数に上ることである。しかも小泉首相の支持率は43%から45%へ上昇している。この世論調査が示していることは、多くの国民は、「如何なる抵抗にも屈しないという」強硬な姿勢を貫く小泉首相のパフォーマンスをむしろ評価しているということではないのか。これを見てますます小泉首相は強硬姿勢を強めるのではないのか。
しかし小泉首相はそんなに立派な信念の人なのか。とんでもない。歴史に学ばず、日中間のこれまで積み上げてきた合意も調べようとせずに、ただ感情にまかせて無責任な発言を繰り返す、単純だが傲慢きわまりない政治家に過ぎないのだ。
そんな小泉首相の正体を喝破した痛快な本を見つけた。久慈力(くじつとむ)の書いた「小泉改革に異議あり」(あけび書房)がそれである。ノンフィクション作家で社会運動家という肩書きの久慈力なる著者が如何なる人なのか、私は知らない。しかし小泉首相が首相に就任して間もない2001年6月に発行されているこの本で、すでに小泉首相の「くわせもの」ぶりを見事に言い当てている。
すなわち著者は、小泉首相の政治家の出自を、祖父又二郎、父純也の14光り(七光りプラス七光り)どころか曽祖父由兵衛を含めた21光りのおかげだと指摘。その曽祖父由兵衛は軍艦に砲弾や燃料、食糧を積み込む港湾荷役への手配師で財をなした、つまり海軍と密着し、戦争とともに成長した「政商」であることを強調する。
横須賀の軍港から参戦して行った軍艦からおこぼれを得ていた家に育った小泉首相がいきおい国粋的になり、戦後は横須賀の米軍基地に出入りする巨大な空母を見て育った小泉首相が米国に屈従的になるのはうなずけるとしても、その小泉首相の発言はつねに左右にぶれるという指摘は鋭い。
例えば沖縄問題に関し、一方で「出来るだけ米軍基地を縮小したいというのは国民共通の願いだ。その声を真剣に受け止め、米国政府に努力を要請する」と国会答弁したかと思えば、他方で「わが国の米軍施設・区域は、日米安保条約の目的を達成する上で重要な役割を果たしている」と、米軍基地撤退の視点をまったく欠いた答弁をして平然としている。
また憲法改正に関しては、「国民のコンセンサスが必要だ」とか、「憲法で武力行使を禁止している日本が武力を否定しない五大国と同じことは出来ない」、「日本の安全保障理事会入りには反対だ」と発言していたかと思うと、別のところでは、「憲法9条は改正すべきだ。いざという場合には命を捨てるような者に敬意を持てるような憲法がいい」と発言する。
このように、久慈は、小泉首相が出版物や雑誌、国会答弁などで述べた主要なテーマに関する発言を調べ上げたうえで、小泉首相の発言が頻繁に矛盾してきた事を示している。要するに彼には確固とした自分の意見が無いのだ。
その一つ一つをここで紹介する余裕は無い。しかし外交問題に関する久慈の次の言葉は是非ここで引用しておきたい。
「・・・小泉内閣は外交問題で重大な失策をする可能性が高い・・・」
八方塞りの今日の外交を、三年前に見事に見通しているのである。

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2005年05月27日

【バックナンバー】2005-05-27

税金が食い物にされている

 今更ながらこの国の税制の不正を痛感する。それは消費税の引き上げが必至であるということではない。我々国民が知らないところでかくも多くの不合理な税金が跋扈しているということである。そしてその税金が我々の知らないところで官僚や族議員に食い物にされているということである。
 道路特定財源という言葉がある。揮発油税、石油ガス税、自動車重量税、地方道路税、軽油取引税、自動車取得税からなる。これほど多くの複雑な税金が自家用車を所有する国民に課せられているのである。1953年に、諸外国に比べて立ち遅れていた道路を整備するため「自動車の利用者に整備費を負担させる」という考え方で導入された。05年度の税収見込みは国と地方合わせて約6兆円。こんなに多くの税金が有無を言わせずに徴収されているのだ。
 問題はその使途である。27日の朝日新聞で、この財源の奪い合いで関係省庁、族議員の綱引きが激しくなっている事が書かれている。その理由は税収が増えて来年度にも余剰金が出ることが確実な為、それをどこにまわそうかという争いだ。財務省は財政赤字の補填の為にも一般会計へ入る額を減らしたくない。旧運輸省、旧建設省、環境庁などはそれぞれの所管事業に金を回したい。その裏に族議員が動き回る。
 しかしもっと深刻な問題は、このような財源が、橋梁談合事件で明らかなように業界、官界、政界の利権に還流されているおそれがあることだ。そしてもっと腹立たしいのは、余剰金が出るようなら税率を下げるなどして国民に還元すべきであるところが、一向にそういう議論が出てこないことである。27日の日経新聞に、「余剰金という言葉は使うな」という指示を国土交通省幹部が出したという記事があった。谷垣財務相は「今すぐ余剰が出るわけではない」と火消しに回り、財務省幹部は「税収が減るのは困る」と本音を漏らしているという。
 特定財源の見直しこそ財政改革の主要なテーマであるはずだが、郵政民営化が改革のすべてであるように、国民の関心はそっちに向けられたままだ。

 軍隊なき占領

 久し振りに面白い本を読んだ。面白いというより慄然とする本だ。占領の混乱期に、米国が日本を自らの都合のいい国に支配しようと暗躍していたということは知っていた。しかしここまで日本の指導者層が米国の手先になっていたとは驚きである。
 ジョン・ロバーツというジャーナリストの手による「軍隊なき占領」(講談社アルファ文庫から03年3月20日に邦訳発行)は、マッカーサーの日本民主化政策が、ハリー・カーンをはじめとしたジャパン・ロビーの手で180度逆行させられ、戦後の日本が、民主化どころか、米国に操られた日本の指導者層と闇のフィクサーによって、国民の犠牲のもとに完全な米国の手先にさせられてしまったという事実を、資料に基づいて証明した本である。
 圧巻は、自ら絞首刑を覚悟していたというA級戦犯の岸信介が、おなじくA級戦犯の児玉誉士夫、笹川良一とともに無罪釈放され、米国の手先となって日本を米国に差し出した売国奴であると断定している箇所である。期限が切れそうになった安保条約を国民の反対を押し切って延長した岸の米国にとっての存在価値がそこにある。
その岸内閣で閣僚を務めた福田赳夫もジャパン・ロビーに取り込まれた一人だ。岸の孫である安倍晋三や福田の下足番をしていた小泉がここまで米国に従う理由は、実は我々が想像している以上の深い理由があることを、この本は教えてくれる。
 ジョン・ロバーツは言う。日本の歴史学者は日米関係の裏面史を決して書こうとはしない、それは彼らもまたジャパン・ロビーとの関係を有難がってきた連中であり、なによりも米国に操られたこの国の支配者層の最大の汚点を追及することは自殺行為であるからだと。
 我々はひょっとしたら孫悟空のように米国というお釈迦様の手に上で踊らされているのかもしれない。いくら小泉批判を重ねても無駄なことかもしれない。小泉首相がこれほど傲慢でいられるのも米国という強力な後ろ盾によってその地位が保証されている事を知っているのかもしれない。もちろんその為にはあらゆる米国の指示を、国民の願望よりも優先するという対価を払っての事である事も。
 果たして日本はこの「軍隊なき占領」から逃れられるであろうか。徒手空拳の我々国民ができることはあるのか。むしろ無駄な抵抗を諦め、口をつぐんで体制に従うことが利口なのか。
そうではあるまい。この国が我々の知らないところで深く米国に占領されているのなら、なおさら日本を米国から取り戻さなければならないであろう。それは将来の世代への我々の責任であろう。
すべては事実を知る事から始まる。一人の出来ることは限度がある。しかし皆が知識を持ち寄り、情報を分かち合って、日本の戦後史を徹底的に学ぶことだ。後世に語り継いでいくことだ。そして日本を奪還する希望を失わないことだ。
米国や米国に操られた日本の支配層が最後におそれるのは、国民の目覚めである。自立である。最後に従わなければならないのが国民の声である。大衆の叫びである。だからこそ彼らは事実を伝えようとしない。国民のマインドコントロールに躍起である。小泉首相のパフォーマンスもその一つだ。
しかし情報伝達の進歩は、そのような姑息な操作をますます難しくさせていくであろう。過去には可能であっても最早時間の問題だ。真実が明らかになり国民が目覚めた時こそ、新しい日本の始まりに違いない。

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2005年05月26日

【バックナンバー】2005-05-26

米国とイスラエル

 26日の朝日新聞にヒラリー・クリントン上院議員とライス国務長官が、次期大統領選を意識して、それぞれ、イスラエルとの連帯を競い合う演説をしたという記事が載っていた。全米最大のイスラエル・ロビー団体である「アメリカ・イスラエル広報委員会」の年次総会での出来事である。
 すなわち23日にライス国務長官が先に演説した。イスラエルにとって米国ほど強固な支援者はいないと述べる一方で、パレスチナに対しては民主化とテロの根絶を求め、和平交渉再開に難色を示すシャロン政権に理解を与えた。
 24日に演壇にたったヒラリー議員は、米国とイスラエルの強固で永続的な関係は平和で安全な世界を築くために必要不可欠、パレスチナ自治政府やアラブ諸国が教科書で反ユダヤ主義を煽っていると述べた。
 二人ともイスラエルの「占領」やパレスチナ民間人の殺傷にはふれないままであったという。
 イスラエルのロビー集会に出席した以上、リップサービスするのは当然かもしれない。しかしそれだけだろうか。「アメリカこそユダヤ人の安住の国である」と言われるほどに米国は年々ユダヤ人の影響が強まりつつある。米国はもはやユダヤ人にとって最も居心地のよい国になってしまったのではないか。もしそうだとすれば、米国がパレスチナ問題について中立的な政策を採れるはずはない。
パレスチナ紛争はパレスチナ人の犠牲のもとにしか永遠に解決しないのではないかと思えてくる。アラブ諸国がパレスチナ人を見捨てた今となっては、そして国際社会が無関心である限り、パレスチナ人の全面的譲歩しか紛争の終わりはないと思えてくる。多くの犠牲者を出し続けながら、米国、イスラエルの強硬姿勢がパレスチナ人を黙らせることになるであろう。その時まで、米国の「テロとの戦い」が続く事になる。

NGOが公務員に起用される

 少し前のことになるが気になっていたのでここで指摘する。22日の毎日新聞に、政府が「国際平和協力研究員」制度なるものを創設したという記事があった。これはNGOなどで地域復興や人道援助に取り組んできた民間人を、政府が非常勤の国家公務員として起用し、政府の国際貢献の質を高めるというのだ。
 官民協力、民間ノウハウの活用などと聞こえはよいが、その実態は官僚が考えそうなパフォーマンスだ。事実この制度は、明石元国連事務次長が座長になっていた福田康夫官房長官(当時)の私的懇談会「国際平和協力懇談会」の提言に基づいて具体化されたという。第一号として今年度わずか4人しか採用されていない。こんなことをするくらいなら公務員の一部を振り替えて、技術を持った国際協力担当官を大幅につくればいいだけの話だ。
NGOは、非政府組織という名が示すとおり、本来は政府と対極にある存在であるはずだ。お上に頼らずボランテア精神で活動するものだ。しかし志は高くても如何せん資金が不足している。政府からの支援があればありがたい。またNGOの中には公務員の待遇を受けて国の支援を受けて活動したほうが効果的だと考えるものがいても不思議ではない。
このジレンマを官僚は巧みに利用する。この制度は正社員とパートの関係だ。公務員になった連中は、出来が悪くとも権限と予算に任せて何でもできる。やる気があり使えるパートを一時的に公務員待遇に引き上げ働かせる、自分たちは後ろで命令する、そういう構図である。なんともやりきれない。
いやしくも政府がNGOを活用すると決めた以上、潔くODAをNGOに一括して与えて思う存分活動させる、そのような抜本的制度改革ができないものであろうか。しかし日本の官僚主導の行政ではそういうことは決して起こらない。官と民の主従関係が崩壊する。官僚の役立たずが露見して官僚制度そのものが危うくなる。今度の「国際平和研究員」制度は、あくまでも官主導の援助政策を守るための見せ掛けの新制度に過ぎないのである。長く続く事はあるまい。

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2005年05月25日

【バックナンバー】2005-05-25

学歴社会の行き着く先

 24日の産経新聞に匿名の論評が載っていた。「日本の将来が薄ら寒い」と題して、大阪府の主婦から届いた投書を紹介し、日本の教育の現状について論じている。そこで紹介された投書とは以下のごときものだ。
 ・・・長男が昨年、公立中、公立高から東京大学に合格しました。親としては嬉しい限りなのですが、大学新聞などによると、今や東大進学者の半数以上が中学から私立だというのです。息子は「彼らは人種が違う。うちのような庶民の子はほとんどいない」といいます・・・息子は法学部で、周りは官僚や司法試験などを目指す子ばかりですが、そうした人たちが、「人種が違う」ままでいいのでしょうか。近所にどんな子がいたかもわからずに育ち、ましてや庶民の生活を知らない彼らが、日本の将来を左右するような仕事に就くことに、私は薄ら寒いものを感じます・・・
 この投書を紹介したあとで、この論評を書いた産経新聞の匿名の記者は、東京大学教育学部の苅谷剛彦教授の次の言葉を引用している。
 「・・・90年代初頭のゆとり教育導入以降、その傾向はますます進んでいる。『ゆとり』から脱出させようとするあまり、親も純粋培養されたエリートをつくることに抵抗がなくなってしまった。これはもちろんわが国の教育行政の大きな失敗であり、そうした受験エリートたちが今、社会に続々と出ているのである・・・(根本的な解決策は)公立校の再生しかない・・・」
 私はこの記事を読んで、何かがおかしいと思った。もちろん、金持ちが、塾や受験私立校を使ってその子弟を受験に成功させるような、生まれたときから「機会不均等」となっている日本社会の現状は問題だ。しかし「機会不均等」以前の問題として、国民全体が今でも信奉する、ゆるぎない学歴社会そのものがすべての元凶ではないのか。
 この投書をした主婦にしたって、「自分の子は金をかけずに公立校一本で東大法学部というエリート仲間に入ったのだ、むしろ金持ちの子弟よりも立派だ」という自負心を感じる。学歴主義のとりこになってはいないか。東大に行けなかった学生たちは、その他大勢なのか。エリートとして「この国を左右するような仕事」に就けないのか。
 ホリエモンが雑誌のインタビューで書いていたことを思い出す。自分は東大文学部に入った。東大で勉強したいというのではなくそのブランドが欲しかったのだ。もし自分の学歴が東大でなければただの若造としてもっと叩かれていただろう。東大というブランドがあるために一目置かれる、それがわかっていたから、とにかく東大の肩書きをまず手に入れようと思ったのだ・・・確かそんな記事であった。彼はいみじくも日本の学歴偏重の本質を掴んでいたのだ。 
 何とかしなければならない。しかし苅谷教授の言うように、「公立校の再生」だけで片付く問題であろうか。そんな生易しい事では、日本はいつまでたってもこの学歴偏重社会から抜け出せないであろう。そしてますます日本の若者は病んでいくであろう。
いっそ法律を作ってあらゆる履歴に学歴を書くことを禁じたらどうか。あたかも出自や年齢によって差別することを禁じるように、学歴を聞いたり、それによって差別したりすれば法律で罰せられるようにしたらどうか。教育の本質は読み、書き、計算であって、それ以外は学びたいものが、好きなことを自由に学べる環境をつくるだけでいいのではないのか。考えてみるがいい。受験から開放された子供たちに、いかに多くの自由が待ち受けているかを。
私が間違っているのだろうか。世間の多くの親も子供も、学歴と言うブランドを求めて、他者との差別化を積極的に追い求めているのかもしれない。勝つ事に優越感を感じているのかもしれない。
もしそうだとしたら、日本と言う国はつまらない国になってしまったということだ。そこにこそ、私は「薄ら寒さ」を感じるのだ。

日・米・イスラエル三国同盟が出来上がっているのかもしれない

25日の新聞に書かれている小泉首相の24日の動静のなかで、二番町のイスラエル大使館に夜の8時ごろからわざわざ出向いて、コーヘン駐日イスラエル大使と一時間半ほど音楽鑑賞をしていることを知った。
これには二つの意味で驚いた。中東紛争をめぐり日本は中立的な立場からパレスチナとイスラエルに公平に働きかけると、小泉首相はアッバスPLO議長に官邸で公言したばかりである。エルサレムに分断壁を建設し、パレスチナへの攻撃の手を緩めないイスラエルに、日本の総理がここまで友好関係を演出することがわが国の中東外交に悪影響を与えるという認識はないのか。
さらに、この夜は中国副首相の突然のキャンセルの原因が、小泉首相の靖国参拝に起因していると言う事を中国側が認め、これに対して日本側が反発している時である。その時にイスラエル大使館で一時間半も音楽鑑賞を続ける小泉首相の余裕はどこからくるのか。
そう思っていたら、同じ25日の日経新聞に、イスラエルのシャランスキー元閣僚が、日経新聞のワシントン特派員に対し、「中東に引き続き中国にも民主化圧力を強めるべきだ」と主張したという記事が目にとまった。彼は、ブッシュ大統領に「私に一つアドバイスするとしたら何か」と問われ「各国の反体制派を支持すること」と答えたという話を披露している。中東に民主化を拡大しようとするブッシュ政権の外交方針に大きな影響を与えたとされる人物である。
その彼が中国について、「15-20年後には世界第二の超大国に浮上する。米国の安全保障は中国国内がいかに自由になるかに左右される」と述べ、中国に民主化圧力を強めるべきだといっているのである。
駐英大使である野上義二氏は、かつて外務次官の時、訪日中のイランのアミンザーデ外務次官に「パレスチナ問題から手を引け」とイスラエルの代弁者のごとき発言をしていた。彼はワシントン在勤中にユダヤ系米国人とのつながりを構築したことを自慢げに話し、ユダヤ系米国人との関係が良いので自分は出世すると回りに吹聴していたという。その野上大使は、今度の大使会議で日本に滞在している時に、わざわざ一人官邸を訪れ小泉首相と会っていることが、やはり新聞紙上の首相の動静欄で明らかになっている。
小泉首相がここまで中東政策で対米従属政策を繰り返すのも、中国に対する強硬姿勢に固執するのも、米国・イスラエル同盟と手を繋いで、自らの地位を確保されているからではないのか。その見返りとして米国・イスラエルとの関係を重視しているのではないか。そう考えることで小泉首相のあらゆる言動が見事に符合する。

 橋梁談合事件の真の責任者は誰か

 国が発注する鋼鉄製の橋梁小路を巡り公正取引委員会が大手メーカーを独禁法違反で告発し、東京地検が強制捜査を開始した。近く立件されることは間違いない。いつものように、多くの関係企業の責任者が頭を下げ、罪悪人となってマスコミに叩かれることであろう。
 しかし彼らを叩くことにより問題の本質を見失ってはならない。多くの官僚がこれら企業に天下っているのである。天下り官僚の役割は何か。出身官庁とのパイプ役であるはずだ。すなわちこれら談合の背景には主管官庁OBと主管官庁の関与があるはずだ。
 そもそも国が発注する工事に談合があったのである。発注先の国の責任こそ問われなければならない。ましてや国が談合を黙認していたとすればどうか。今度の事件は長い間の官民癒着構造の一端がなんらかのきっかけで明るみになったに過ぎないのだ。
 今後の捜査で全貌が明らかにされなければならない。しかしおそらくそうはならないであろう。検察そのものが官僚なのである。官僚は身内をかばい、見せしめに民間にすべての責任をかぶせる。この国で繰り返されてきた壮大な欺瞞である。事態の進展に注目していきたい。

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2005年05月24日

【バックナンバー】2005-05-24

小泉首相の暴走を止めるのは誰だ

 小泉首相の有頂天ぶりはとどまるところを知らない。薄ら笑いを浮かべ軽口を連発する小泉首相は、権力を独り占めする余裕を楽しんでいるかのようだ。「私は様々な権力闘争を勝ち抜いてきた」(24日産経)、「絶妙だっただろう。国会議員要覧を毎晩、ひっくり返しながら決めたんだ」(24日日経)。いずれも先週開かれた与党幹部との内輪の会食の席で、郵政民営化の決意をすごんでみせた時の発言だという。いまだかつて日本の首相でここまで好き放題を許された首相がいたであろうか。
何故彼はそれほど傲慢であり続けられるのか。その責任は自民党、民主党、そして小泉首相を支持し続ける5割の愚かな国民にある。
郵政民営化の茶番劇をここまで放置させた自民党の政治家たちは、閣僚人事で釣られ、解散と公認で脅かされて、身動き出来ないでいる。
一方、「民主党が野党でいる限り安心だ」と舐められっぱなしの民主党の体たらくはどうだ。政権を自民党から奪い取る実力も、その可能性も無いのに、「政権準備政党」などと先走って、自民党の補完勢力に成り下がっている。そんな民主党こそ小泉政権を支えている元凶だ。国民の多くが望んでいるのは徹底した政府批判なのだ。民主党はもっと野党精神に徹するべきだ。ひたすら批判し続けて小泉首相を追い詰めなければならないのだ。それがさっぱり出来ない。坊ちゃん集団の限界だ。
しかしなんと言っても小泉首相の横暴を許しているのは50%もの支持率を与える国民である。小泉首相が政策よりもパフォーマンスにうつつを抜かすのは、政策づくりに頭を使うより食事や観劇に興じる彼の内容の無さから来るものだが、やはり国民受けを狙ってのものでもある。そのパフォーマンスに騙される日本国民の半数こそ、芸能政治家小泉純一郎の最大の応援団なのだ。
日本全体がこんな風だから誰も小泉首相の暴走は止められない、そう思っていたら、そうではなかった。小泉首相に最大の強敵が現れた。
おごり高まった首相は5月16日の衆院予算委員会で、民主党仙谷由人議員の挑発に乗って思わず口を滑らせてしまった。靖国参拝は他国に干渉される話ではない、A級戦犯合祀の何が悪い、と言い切ったのだ。ジャカルタでの首脳会議で反日デモの収拾策を合意したばかりというのに、それを逆なでする挑発的発言だ。これが日中間の外交関係に発展しないはずはない。果たせるかな、万博参加で訪中していた呉儀中国副首相は、予定されていた小泉首相との会談をキャンセルして帰国した。
24日の各紙は大騒ぎでこの顛末を書いている。格下の副首相にドタキャンされて黙っていられるかとばかり国民の反中感情を煽り立てるマスコミはまるで小泉首相の別働部隊のようだ。歯向かうものには容赦の無い小泉首相は、さぞかし怒り心頭に発していることであろう。「先方が会いたいというから予定をつくったのに、野党の審議拒否が伝染したのかな」、「(靖国参拝中止の圧力をかけようとしているのだろうが)そんなものは通用しないんですけどねえ」ととぼけて見せている。その内心は「ダメと言われてやめられるか」(週刊現代5月14日号)とガキのようにムキになっているに違いない。
愚かだ。日本の軍国主義の被害になった「当事者」である中国を「他国」と称し、「他国が干渉する問題ではない」と言い切る神経の無さ。それが、これ以上日中関係を悪化させまいと努力する胡錦涛主席をいかに困らせ、刺激していることか。訪中した武部幹事長が、日中平和友好条約の相互不干渉の原則を強引に引用し、小泉首相を弁護しようとしたところ、王家瑞共産党対外連絡部長は「今なんと言ったか。信じられない発言だ」と強く抗議したという(24日産経新聞)。胡主席はまた「(中日関係の発展という大きなビルの建設は)レンガを一つ一つ積み上げないと出来ないが、壊すことは一瞬で可能だ」と述べたという(24日毎日新聞社説)。さすがの公明党も神崎代表、冬柴幹事長が自粛を言い始めた。小泉首相の財界応援団長である奥田経団連会長も、「首相の姿勢は理解している」と述べた上で、「個人の判断と国益の判断は違う」と靖国参拝に反対し始めた(24日各紙)。
誰にもとめられない小泉首相の暴走は、中国の壁に激突してやっと止まるのであろうか。しかしそれはあまりにも悲しいことだ。小泉首相の激突死のことではない。日中関係が悪化することが分かっていながら何も出来なかった我々の想像力のなさについてである。その無気力さについてである。小泉首相を放置し続ける我々は、本当に真剣に考えなければならないところまで来ていると思う。

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2005年05月22日

【バックナンバー】2005-05-22

拉致問題と核問題

小泉再訪朝から今日で丸一年ということで、各紙は特集記事を一斉に載せている。しかし交渉の行き詰まりを嘆くばかりで、ここまで行き詰らせてしまった小泉首相の責任を検証する記事は一つもない。あたかも小泉批判がタブーのようだ。しかしすべての原因は小泉首相の動機の不純さと小泉首相を誤らせた外務省の無能さにある。ここを糾弾し責任を徹底的に追及しない限り、北朝鮮問題は終わらない。
北朝鮮問題について我々は、常に三年前の小泉首相の突然の訪朝と平壌宣言にさかのぼって検証しなければならない。あの時小泉首相は何をしたかったのか。拉致行方不明者の救済か。北朝鮮の核開発を止めさせる事か。そうではない。日朝国交正常化であった。
拉致行方不明者の救済でないのは、当時の外務官僚が「わずか10名程度の安否の為に国交正常化という大義の実現が妨げられてたまるか」と言う趣旨の事を様々な機会に繰り返して公言していたことから明らかである。更に又平壌宣言の文言の交渉過程で、北朝鮮に反対されて「拉致」という表現をあっさり落としてしまったことからも明らかである。断言する。小泉首相、外務官僚は、北朝鮮が拉致の事実をどのような形にせよ認め、不明者の何人かが生きて帰ってくれば良かったのである。全員を連れ戻そうなどという気は初めからなかった。その証拠に行方不明者の多くが不明な死を遂げたと聞かされても、それに憤りもせず、また検証もせず、あっさり平壌宣言の一字一句変えずに署名して、平然と帰ってきたではないか。何があって平壌宣言に署名し日朝国交正常化を軌道に乗せたかったのだ。
核開発を本気で止めさせようとしていたのか。とんでもない。北朝鮮の核開発に最大の懸念を持っている米国にも十分に連絡せずに突然訪朝し平壌宣言を結んだのである。しかもその中で北朝鮮に核問題について国際約束を遵守することまで書かせている。しかしこの約束がいかにデタラメであったかは、今日の北朝鮮の核開発状況をみれば一目瞭然である。日本はあの時、北朝鮮が核開発についてどのような状況にあり、どのような意図があるかについて、確たる情報も無く、また本気で核開発を断念させる気もなく、筆をなめた作文だけで満足したのだ。初めからそのつもりだったのだ。北朝鮮にとってはこんな楽な交渉は無かったであろう。騙されても文句一ついわずに鵜呑みにする。今でも平壌宣言は生きていると強弁する。そもそも日本が単独で北朝鮮に核開発の断念などさせられるはずはない。核問題は米国のみが北朝鮮に圧力をかけることが出来るのだ。その米国に事前の通報を行わず、北朝鮮の核開発情報も米国から入手せずに交渉に臨み、そして平壌宣言に合意してきたのである。
それでは小泉首相は本気で国交正常化を実現したいと思っていたのか。とんでもない。国交正常化の本質は過去の清算である。それは経済援助をばら撒く事ではない。金で外交を買うことではない。ところが小泉首相の歴史認識を考えて見るがよい。靖国参拝一つをみても明らかであろう。「A級戦犯のどこが悪い」と公言しているのである。そのA級戦犯が合祀されている靖国参拝を中国や韓国がこれほどまでに中止してくれと申し入れても「他国に干渉される筋合いはない」といって突っぱねているのである。こんな人間が本気で国交正常化を願っていたなんて悪い冗談である。彼にだけは国交正常化をしてもらいたくはないと言えるほどに国交正常化を進める資格の無い人間なのだ。要するに小泉首相は多額の経済援助と見返りに「国交正常化」という手柄を自分のものにしたかっただけなのだ。外務官僚は小泉首相のそのようなあさましい個人的自尊心を満たす事によって小泉首相の覚えめでたく出世したいと思っただけなのだ。口では歴史の清算などとかっこいい事を言っていても、魂は全く入っていないのだ。
気の毒なのは拉致不明者の家族たちだ。この三年間に受け続けた精神的苦痛は大変なものだ。しかもその苦痛は拉致交渉が頓挫した今となっては更に大きい。小泉首相や外務官僚を訴えもいいほどの精神的苦痛である。
私が残念に思うのは、その拉致家族の怒りが小泉首相や外務官僚の無責任さに向かうのではなく、経済制裁という形で北朝鮮に向けられていることである。経済制裁では物事は解決しない。経済制裁だけを言っていても世論の大勢を味方につけることは出来ない。我々が言うべきは、小泉首相に訪朝を求め、金正日と直談判して交渉で解決しろということだ。三年前に金正日総書記は小泉首相に拉致問題を認めて謝罪したのだろう。小泉首相は今こそ解決されるまで何度でも訪朝すべきである。「自分しかできないから」と大見得を切って二度も訪朝したのは小泉首相だ。それがもう点数稼ぎにはならないから訪朝しない、拉致問題は関心が無くなったでは、許されない。しかしそのとおりなのだ。もはや拉致問題は点数稼ぎにはならない。そう思ったとたん、手のひらを返したように冷たくなる。世間の話題にしたくなくなる。小泉首相はそういう政治家なのだ。
最後にもう一つ、我々が当たり前のように聞かされていて、それがとんでもない勘違いである6カ国協議について言及したい。6カ国協議の再開が重要だなどと政府は繰り返す。そんな馬鹿なことを惰性にように繰り返すのではなく、日本政府は一日も早く中国、韓国、日本、北朝鮮の4カ国協議を始めるべきなのだ。
そもそも6カ国協議などというのは、北朝鮮の核放棄しか関心のない米国が、北朝鮮との直接交渉を嫌って他の国を巻き込んで圧力をかけようとする戦術に過ぎない。そして今では孤立しているのは米国なのだ。その米国の後をついていくしかない日本なのだ。
そんないかさまに付き合わされる事なく、日本は歴史の清算も含め中国、韓国、北朝鮮と拉致問題について話し合うのだ。核についてもアジアの不拡散、米国も含めた世界的な不拡散について話し合うのだ。しかし小泉首相は自らの靖国参拝で中国、韓国との関係を行き詰らせた。自らの米国絶対追従外交のために米国に物が言えなくなってしまった。米国の参加しない会議には参加できなくなってしまった。こんな事では到底まともな外交ができるはずはない。
北朝鮮問題は、小泉外交の矛盾と外交の不在がもたらしたもっとも困難な問題になってしまった。メディアはそして我々国民は、このことを真剣に考えるべきだ。問題の本質から目をそらしてはいけないのだ。

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2005年05月20日

【バックナンバー】2005-05-20

元毎日新聞記者西山太吉氏の言葉

 週刊朝日5月27日号に、毎日新聞の元記者である西山太吉氏の言葉が掲載されていた。外務省機密漏洩事件の主人公である西山氏(73)は、この4月に、国を相手に損害賠償と謝罪を求める訴訟をおこした。その心境を週刊朝日の記者がインタビューしているのである。
  念のためにこの事件の概要をここに説明しておきたい。1971年の出来事である。私が外務省に入って間もない頃の出来事であるのでよく覚えている。当時毎日新聞政治部の記者であった西山太吉氏は、外務省の女性職員を通じ極秘の電信文を入手し、沖縄返還協定に「400万ドルの原状回復費を日本が肩代わりする」という密約があったことを記事で指摘した。その後この問題は楢崎弥之助氏(当時社会党衆院議員)よって国会で追及され大問題になった。しかし政府はその事実を否定する一方で、世間の関心を密約問題からそらせるために、西山記者は「ひそかに情を通じて女性職員をそそのかし、秘密文書を持ち出させた」ひどい記者だと攻撃、西山記者と女性事務官は逮捕されて終わった事件である。
 その後2000年に公開された米国国務省の公文書によって、71年当時の日米両政府の交渉経緯が明らかになった。その公文書には、吉野文六外務省アメリカ局長(当時)の発言やサインとともに、返還土地の原状回復費400万ドルを日本側が代わって支払う事が、ハッキリと書かれていた。しかし日本政府は、その後も一貫して密約の存在を否定し続けている。最近では02年に福田康夫官房長官(当時)と川口順子外務大臣(当時)がいずれも会見などで否定した。
 国家機密漏洩罪を犯した西山記者は犯罪者だ。だから罰せられた。しかし国民を裏切って密約を行い、しかも明らかなウソをついてその存在を否定続ける政府の罪がまったく問われないのはどう考えたらいいのか。西山記者がおこした訴訟を通じ「法の支配」がこの国でもまだ存在しているということを私は確認したいのである。
週間朝日に掲載されている西山氏の言葉を断片的に以下に引用する。
「・・・もう人生の最終段階だからね、最後にもう一度、国家権力の組織犯罪を追及することにチャレンジしようと思うんです。政府の閣僚たちが今も平然とウソをつき続けているんですよ。大変な問題だと思うんだけど、新聞はあまり取り上げないし、政治や外交に対する世の中の関心はあまりに低いもんだから、政府とすれば「時間もたっているしウソをついても埋没するだろう」と判断しちゃう。この問題を徹底的に究明してどう世論に訴えられるのかと考えると、もう提訴以外にないという決心に至ったんです・・・沖縄返還協定の第4条3項に、「400万ドルをアメリカが自発的に支払う」と書いてある(のに、その裏で、「400万ドルは日本が肩代わりする」という密約があったことが)アメリカ側の公文書のなかで書かれていた・・・今でも悔しいのは、あの刑事裁判が、密約の核心には何もふれずに経過したことです。私は国家機密の文書を入手して罪に問われたわけだから、機密がどんな性質なのかが精査されるはずだった。密約に違法性があるのか、国民に知らせるべき機密なのかが総合的に判断されるべきでしょう。でも検察がいかに政権の属領でしかないかがわかりました。密約の本質に関係なく、起訴状で「情を通じ」などと書き、男女関係が唯一の訴追要因になった。そこに目を向けることで外務省と一緒に犯罪を覆い隠したんです・・・司法もマスコミも社会も同調してしまった。ほんとに不条理だよ。密約という国家犯罪なんかぜんぶ忘れ去られて・・・」
私は当時の事をいまでもよく覚えている。忘れていないからこうして書いているのだ。

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2005年05月19日

【バックナンバー】2005-05-19

国連改革ごっこはもう止めてくれ

 120人近くの大使を3日間も東京に滞在させて町村外務大臣は何をしているのだろう。常任理事国入りのために「各国の支持を取り付けろと命じる」のなら、電話一本で済む話だ。
 19日の東京、読売、日経新聞は、こぞって、米国のライス国務長官がドイツの常任理事国入りに反対の意を示したと報じている。18日付のワシントンポスト紙が、ライス長官が米国議会関係者と懇談した時もらした発言をスクープしたのだ。
 日本はドイツ、インド、ブラジルと組んで常任理事国入りを目指している。ドイツが入れなくて日本だけが入るということはありえない。これは日本の目論見を米国が完全に否定しているということだ。そういえば先日は米国が拒否権を認めないと言ったばかりだ。4カ国が提案する案は拒否権を要求している。根本的なところで米国の意見が日本など4カ国の意見と対立しているのだ。世界各国の3分の2の票集めをするより、まずこれら根本問題を解決するのが先決であろう。
町村大臣は直ちに駐米大使、駐独大使を本国に帰国させ、ライス発言の真意を米国政府に問いただすべきだ、米国に拒否されたドイツ政府の反応を聞くべきだ。そしてそれを国民に情報公開すべきだ。それが外交だろう。
3日間も内輪の会議を続け、無い知恵をしぼり、乏しい情報で議論していても、まったく意味はない。これ以上税金を無駄遣いしないためにも、外交ごっこはもうやめるべきだ。あたりまえの外交を真面目にするべきだ。

いつまでイスラエルを甘やかしつづけるのか

19日の日経新聞に、わが目を疑う記事がでていた。イスラエルのシャロン首相が今月末にもエルサレム周辺の入植地を分離壁で囲い込む工事に着手するというのだ。
そもそも、ベルリンの壁をはるかに凌ぐ巨大なコンクリートの分離壁、パレスチナ自治区の内部にまで侵入する形で建設されつつある分離壁は、国際司法裁判所の勧告的意見で違法とされ、国連総会決議で米国とイスラエルをのぞく圧倒的多数で建設中止が求められている。
それにもかかわらず、ついにイスラエルは聖地エルサレムまで一方的に囲い込むというのだ。周知のようにエルサレムの帰属権はパレスチナとイスラエルの紛争の核心部分だ。それを一方的にイスラエルが分離壁で囲い込む。こんな暴挙を行いながらパレスチナとの話し合いなど始められるはずは無い。イスラエルにはパレスチナとの交渉などハナから考えていないのだ。
ブッシュ大統領がシャロン首相に中止を申し入れなければウソだ。日本政府は来月にシャロン首相を日本に招待し、パレスチナとの和平交渉を求めると言う。ならば直ちに小泉首相はシャロン首相にイスラエルの囲い込みを止めろと申し入れるべきだ。握手して写真を撮ればいいというものではない。
イスラエルの暴挙を放置しておきながら、小泉首相がいくら「中東和平に貢献したい」とパフォーマンス発言を繰り返しても、むなしく響くだけだ。あたりまえの外交を真面目にするべきだ。

イスラエルの若者に期待する

そのイスラエルで異変が起こりつつある。19日の朝日新聞が次のように報じている。
イスラエルは小さな国土の周りをアラブという敵に囲まれている。国民の誰もが国防に専念しなければならない。イスラエルのユダヤ人は男女の区別無く兵役が義務付けられている。しかも兵役を終えても、男はさらに年一回の予備役をこなさなければならないという。
その若者に異変が起きつつあるというのだ。ある陸軍軍曹が、仲間の兵士が、石を投げるパレスチナの子供を追いかけ、力任せに殴りつける、それを目の当たりにして、「これが国防か」と疑問がわき、それ以来予備役召集を忌避しているという。この若者は例外ではないという。精神疾患を装い予備役の免除を求める若者が3割にも増えているという。
それは当然だ。「パレスチナ占領の片棒を担がされている」という事実を知った若者が、「軍服を着るのは格好が悪い、おめでたい奴とみられたくない」と感じ始めるのは自分の良心に忠実である証拠だ。
予備役改革の諮問委員長を努めたベングリオン大学のアビシャイ・ブラバーマン学長は、「イスラエル軍が職業軍人だけで成り立つ時代は、今後10年は来ない。なお社会のあらゆる階層から兵士が集まってくる点で、イスラエル軍はなお人民軍であり続ける」と断言するという。
しかしこの朝日新聞の記事はこう締めくくっている、「そこにはイスラエル軍が国民の接着剤であり続けて欲しいという旧世代の願いもこめられているようだ」と。
中東和平が動き出すとすれば、事実に目覚めたイスラエルの若者が、イスラエル政府やそれを支えてきた旧世代に異を唱える時ではないかと私は思う。「石を投げて抵抗するパレスチナの子供を殴りつけたり殺したりする」事実を知った時、良心に目覚めて、イスラエル政府のやっていることは間違いだと若者が気づかないほうがおかしいと思う。
イスラエルと言う国が、「このままでは世界と協調して存立することはできない」、イスラエルの若者がそう考え、外からの声に一切耳を傾けないイスラエル政府を内部から変えていく力になる、そういう国になって欲しいと、私はこの記事を読んで心から願うのである。

サッチャー元英国首相の息子の罪の深さ

 今年1月頃の報道で、サッチャー元英国首相の長男マーク・サッチャー氏(51)が赤道ギニアのクーデター計画に関与したとして南アフリカ共和国の裁判所で有罪判決を受けたことは知っていた。しかし19日の朝日新聞松本仁一編集委員の記事で、長男の罪の深さを知った。このクーデター計画の実施部隊が南アの傭兵会社「エグゼクティブ・アウトカムズ」だったと言うのだ。しかもそのクーデター計画の動機が、赤道ギニアの海底石油に目をつけた英国石油資本が、自分たちに都合のいい大統領にすげ替えようとしたことにあったというのだ。
 松本編集委員は、最大手の「軍事請負会社」アウトカムズ社について次のように書いている。
 ・・・アパルトヘイト時代の旧南ア軍将兵を中心に、89年に創設。兵士の訓練、武器弾薬の補給、警備などあらゆる業務を提供する。アンゴラやシェラレオーネの内戦で政府に雇われ大きな成果を上げた・・・戦争は国家の専権事項である。傭兵とはいえ国家の軍隊の一部だ。戦争に、金銭で戦闘行為を請け負う民間企業が、大挙出現してきた。イラク戦争後の大きな変化である・・・だいたい傭兵というものはその国の兵士の士気が低下した時に現れるものだ。大量破壊兵器は無く、アルカイダとのつながりも見つからない。戦争の意義が不明確なまま泥沼に入り込んだ。米兵は士気が上がらず、テロ攻撃に怯える。傭兵会社が後ろで支える格好だ・・・
 こんな傭兵会社と一緒になって、利権の為のクーデターにサッチャー元首相の長男が関与していたのだ。そういえばサッチャー首相は、レーガン米国大統領と一緒になって、南アの白人政権に対する経済制裁に最後まで反対した首脳であった。長男の関与を果たしてサッチャー元首相は知らなかったのであろうか。いずれにしてもサッチャー首相は晩節を汚したことになる。

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2005年05月18日

【バックナンバー】2005-05-18

私は澤地久枝ファンです

澤地久枝が17日東京新聞の夕刊に「私の憲法論」の中でその思いを書いていた。その内容をここで繰り返さない。彼女がそこで書いていることを私は100%支持する。すなわち・・・イラク攻撃を行った米国の今の軍事優先政策は、「殺し、殺させるなかれ」という人類共通の悲願、「人間的な生活の最低限の前提」である平和、を無視した不幸な政策であり、米国は不幸な国である。その米国に小泉内閣は無表情に追従した。主権者無視、問答無用の政治によって変えられようとしている憲法9条に対し、緊急措置として我々が出来る事は、「憲法9条は変えない」という意思表明しかない・・・そういう思いである。
私は澤地久枝にあったことも話した事もない。しかし彼女書いたものからうかがい知れるその主張に通底したもの、それは名もない犠牲者にそそぐ優しいまなざし、平和に対する根源的な反発である。
同じ女流作家の文章として昨日の曽野綾子の文章を思い出す。澤地は曽野の対極に位置する女性だ。私は澤地久枝にエールを送りたい。

イラク自衛隊派遣違憲訴訟の判決下る

 イラク自衛隊派遣違憲訴訟は北海道の箕輪登氏による訴訟から始まって東京、大阪、名古屋、静岡、山梨など全国10箇所ほどで行われている。私も名古屋訴訟の原告の一人として参加してきた。この自衛隊派遣をどうしても認めるわけにはいかないからだ。
その訴訟の初めての判決が16日東京地裁の鬼沢友直裁判長から下された。自衛隊のイラク派遣が違憲かどうかという判断を避けて、「訴えの利益」が認められないと請求を却下した判決である。
想定されていたとはいえやはり残念な判決である。今回小泉政権が米国のイラク攻撃を正当化し戦乱のイラクへ武装した自衛隊を米国の有志連合軍として派遣した事は、どこから見ても憲法違反である。何を言っても聞く耳を持たない小泉首相の間違った政策を阻止するには、もはやその違憲性に訴えて「法の支配」による阻止しかない、そういう思いで我々は訴訟を行った。
卑しくも法曹を志した裁判官であるのなら、この訴えを正面から受け止め、その違憲性の有無を審理して結論を出して欲しい。訴訟を起こした者たちは皆同じ思いでいる。
それなのに裁判官は正面からの憲法論議を避け門前払いを食わせたのだ。裁判官としてあまりにも卑怯ではないか。この東京地裁の判決を最初の例として、今後はその他の地裁においても雪崩を打ったように同様の却下の判決が下りるであろう。
しかし我々はこれに失望してはならない。あきらめてはならない。どんなに却下され続けようと、それでも違憲訴訟を続けよう。恥ずべきは裁判官の方だ。保身の為に小泉政権におもねる裁判官は、裁判官として良心を捨てたのだ。呵責を感じていないはずはない。我々は裁判官が「法の支配」の重要性を今一度かみしめて、翻意をするまでこのイラク訴訟を続けていこう。イラク訴訟の輪をさらに全国的に広げていこう。自衛隊のイラク派遣はどこから見ても違憲であるからだ。法を犯したこの国の首相を放置するわけには行かないのだ。

核廃絶を願う被爆者たちのむなしい願い

 18日の毎日新聞に、何ともやるせない記事が出ていた。ニューヨークで開かれている核拡散防止条約再検討会議に出席した広島、長崎の被爆者たちに同行取材した毎日新聞の小山内恵美子さんという長崎支局の記者の切ない思いが伝わってくる。読んでいるうちに暗澹たる気持ちになった。それでも希望を忘れてはいけないと小山内記者は訴えているのだ。
彼女は書いている。
・・・オハイオ州デイトンにある米国空軍博物館へ長崎の被爆者5人が訪れた時の事だ。長崎への原爆投下機「ボックスカー」。銀色に光る機体の横には原爆投下を正当化する説明文。そこには長崎が受けた被害への言及は一切ない。チャールズ・メッカフ館長は、「何のために来たのか」と顔をこわばらせ、「核を持つ国がある以上、米国も対抗するため核を持たなければならない」と言い切った。被爆者は声をあげて泣いた。「長崎の被害も展示して欲しい」という願いは全く通じなかった。
会議の舞台となったニューヨークでも「厚い壁」があった。開幕初日から各国の政府代表の演説が行われたが出席し演説を聴いている政府代表は1割程度。「核兵器廃絶がこんな人が少ないところで論議されているなんて」と被爆者の一人が悔し涙を浮かべた。同感だった。
唯一の被爆国で、核兵器廃絶を訴えるべき日本政府でさえ、米国に気兼ねして消極的な姿勢が目立つ。日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が今回初めて国連で原爆展を開いた。「国が主催すべきだ」との被爆者の要請に、日本の大島賢三・国連全権大使は「側面支援する」とあいまいな姿勢で終始した。惨禍にまず耳を傾けるべきは日本政府ではないか、とさえ思う・・・
被爆などの教訓をこめたはずの平和憲法さえ「改憲」の試練を迎えている。

民主党は自民党よりタカ派だ

 18日の産経新聞を読んであきれ果てた。首相の靖国参拝を追及した16日の衆議院予算委員会での民主党仙石由人政調会長の質問に対し、民主党の中から「中国の内政干渉に勢いをつけさせている。党執行部の外交センスのなさを露呈した」(中堅)と批判が出ているというのだ。すなわち日中関係がやや改善の兆しが見られつつある中、「靖国問題は当面静観すべき状況なのに蒸し返してしまった。首相の立場に中国は反発をせざるを得ず、国益のうえでマイナスとなった」(保守系)との懸念が広がっているというのである。
小泉首相の朋友である自民党の福田康夫議員でさえ予算委員会で小泉首相に反省を求めているというのに、民主党の中堅議員、保守系議員とはどういう考えで民主党にとどまっているのか。こんな議員に言いたい放題させている民主党の執行部とは一体なんだろう。要するに民主党は党の体をなしていないということだ。小泉首相に笑われる筈だ。

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2005年05月17日

【バックナンバー】2005-05-17

中国、韓国に喧嘩を売った小泉首相

 たまたま私はテレビでこの発言を聞いていた。16日の衆議院予算委員会で、小泉首相は「靖国参拝を、他国は干渉するな」と言い切った。これには驚いた。反日感情が高まった中心的な問題である。A級戦犯である東条英機の合祀さえも、死んでしまえば済んだことだと、自分は問題ないと思うと繰り返した。
 質問する野党議員も情けない。ここまで言われて反論一つ出来ないのである。他国が干渉する問題ではないだって。中国や韓国はただの「他国」ではない。日本軍に侵略され、国民の多くが恨みを持ち続けている当事国なのだ。それを「他国」の一言で片付ける乱暴な言葉に、野党議員は返す言葉一つ発しなかったのである。本気で追及する気があったのか。そんな態度だから小泉首相がますます増長するのである。
 この国会答弁を聞いて、もし中国、韓国政府が外交問題にしないのであれば、これはもう完全に小泉首相の勝ちである。首脳会談であれほど「A級戦犯が合祀されている靖国参拝だけは止めてくれ」と頼んでいるのに、「干渉される筋合いはない」と頭から否定されたのである。この報道を知って中国、韓国の若者が騒がなかったら、結局あの反日行動は何だったのかということになる。
 小泉首相の強引な開き直りを日本人の誰もとめることはできずに今日まで来た。中国や韓国さえも止める事ができないのだろうか。私はこの靖国問題の今後の推移を最大の関心を持って見守るつもりである。

 外交ごっこはもういいかげんにやめろ(アッバス議長の訪日)

 メディアが厳しく指摘しないものだから国民は気づかないのかもしれない。しかし外務省の手の内は私には嫌と言うほどわかる。だから腹が立つ。そして悲しい。
 17日の各紙はパレスチナ自治政府のアッバス議長と小泉首相の会談を一斉に報じている。1億ドルもの無償援助を与えて日本の中東和平への貢献度を見せつけようとしている。来月にはイスラエルのシャロン首相を招待するという。できれば日本で三者協議をしたいという。
 小泉首相は言う。「日本としては中東和平についてパレスチナとイスラエルのどちらかに偏ることなく、平和共存に向けた努力を積極的にしたい」と。中東問題の何たるかを全く知らない、関心もない小泉首相が、外務官僚の用意した答弁を直前の俄か勉強でしゃべっているだけだ。もう今頃はアッバスやシャロンが誰かも忘れていることだろう。
 同じ日の毎日新聞には、パレスチナとイスラエルの停戦合意が骨抜きにされつつあるという記事が出ていた。7月に予定されているパレスチナ自治評議会の選挙は遅れるかもしれないとアッバス議長は、小泉首相ではなく、野党党首の岡田民主党代表に漏らしている。つまりイスラエルの強硬姿勢は一向に変わっていないのだ。日本の援助でいくらパレスチナの復興援助をおこなってもイスラエルがあらゆる施設を攻撃して、再びそれを破壊しないとも限らないのだ。そして日本は文句の一つもイスラエルに言ってこなかったのだ。
 中東紛争はイスラエルの強硬な態度が変わらない限り、真の解決はない。そして米国はそのイスラエルに甘く、パレスチナに厳しい。だからこそパレスチナの武装抵抗が終わらないのだ。
日本はイラク戦争で米国べったりの立場をアラブに見せ付け、アラブを裏切ってきた。それがよく中立と言えたものだ。日本の外務次官はかつて米国、イスラエルのお先棒を担いで、イランの外務次官に、「中東問題から手を引け」と伝えている。100%米国、イスラエルの味方をしてきた日本が、巨額の金をパレスチナにばら撒いてバランスをとってみせても、それで中立的と誰も思わない。こんな偽善的なことをするよりも、「日本は米国に逆らえないから中東紛争には何の貢献もできません」と白状したほうが、よほどアラブ諸国は評価する。

 外交ごっこはもういいかげんにやめろ(国連安保理常任理事国入り)

 これもいかさまだ。アッバス議長が訪日しているちょうどその時、世界各国に駐在している全大使が東京に呼び戻されて、安保理常任理事国入りのために頑張れとハッパをかけられている。なんというパフォーマンスか。
 世界の3分の2以上の国を援助を餌に説得し、めでたく常任理事国に入れたとしても、所詮拒否権のない二等常任理事国だ。そんなものの為に何故ここまで予算と人員を使って必死になる必要があるのか。誰がそれを唱えているのか。多くの反対国の反発を買って入ったところで、我々国民にとってなんの利益があるというのか。
 それよりもなによりも、米国がなんといっているか知っているか。
 「もし、今日、国連安保理を作り直すとしたら、常任理事国はひとつだけだ。その一つとは米国だ」
 「国連などというものはない。あるのは国際社会だ。それは世界の唯一のパワーである米国によって率いられる」
 「もし(36階の)国連ビルの最上階から10階分がなくなったとしても、たいした違いはない」
 これはブッシュ大統領によって指名された新国連大使ボルトンの言葉である。それはそのままブッシュ政権の考え方だ。
 そんな米国の国連無視の態度を知っていながら、そして安保理改革に一番消極的な国が米国であるということを知っていながら、それでも日本は必死に常任理事国に入ろうとしているのだ。これほど馬鹿なことはない。

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2005年05月16日

【バックナンバー】2005-05-16

傭兵を称賛する曽野綾子

 男女の如何を問わず、およそこの人ほど私の考えと反対の意見を持つ人はいないと思う。その人は曽野綾子だ。
 曽野綾子は産経新聞紙上で毎週「透明な歳月の光」という評論を連載で書いている。その16日の評論において、彼女は外国人部隊について次のように自らの意見を述べている。
 「・・・日本の平和主義者のように、それだけを(戦いはいけない、武器を取ってはいけないということ)唱えていても、世界平和は実現しない・・・あちこちのアフリカの内戦では、武器を持たない人々が武器を持った人々に虐殺されたし、日本の総理が靖国に参って平和を祈願する事を非難する中国は、武器の輸出国だ。世界のどこかで無辜の人々が中国製の武器で無数に傷つき死んでいる。中国はそのことについて、一体なんと説明する積りだろう・・・外国人部隊は、平和主義の美名に酔うよりは敢えて人間の醜い面を正視し汚名を着る道を選んだ。重大な問題には答えを先送りし、それで決定的な非難も受けないようにして生きている私よりは卑怯者ではない、ということだけは明白だ。その覚悟を感じるから世界のマスコミも外国人部隊に関心を寄せ、その存在を通して改めて人生を考え直すのだろう・・・」
 なんという乱暴な論理だろう。勝手な解釈だろう。
 いかなる理由があるにせよ、金で雇われて雇い主の為に人を殺すことを本業とする傭兵の存在を私は全く認めることは出来ない。それどころか傭兵は、それが国際法で言う正規軍でないという理由から、国際法の枠外で人を殺し、殺され、戦争の悲惨さをますます見えにくくしている。これほど不当な存在があるだろうか。
曽野綾子は、それを「覚悟ある傭兵の存在を通じて、我々は改めて人生を考え直す」のだと称える。人生を確認できる手段は、何があっても生を生き抜くという基本姿勢だ。何よりも命の大切さをかみ締めることだ。人の命も、自分の命も。

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2005年05月15日

【バックナンバー】2005-05-15

広島平和研究所所長に就任した浅井基文さん

 15日の毎日新聞「ひと」欄に浅井基文さんの記事が出ていた。この4月から、広島市立大の広島平和研究所所長に就任した、その紹介記事である。心から祝福したい。と同時に今後の活躍を期待してやまない。
 浅井さんは私が尊敬し、評価するただ一人の外務官僚である。私よりも7年先に外交官試験に合格し入省した文字通り大先輩にあたる。もう今から18年も前のことだ。外務省の国際協定課長、中国課長という要職を経験した浅井さんが、日米安保条約を最優先する外交政策に異を唱えて外務省を辞した事を知って、本当に驚いたことを覚えている。
 実は私は彼が辞めた直後に一回だけ会ったことがある。外務省の米国重視一辺倒の外交に疑問を持っていた私は、大先輩の浅井さんに、外務省を辞める決意をした勇気に感動した私の気持ちを伝えたかったからだ。電話で面会を求めた私に、彼は極めて丁寧に対応してくれた。自分は外務省から敵視されている、その自分と会っていることが分かれば君の為にならないと言って、面会場所をわざわざ指定してくれた。今でも覚えている新宿界隈の薄暗い喫茶店だった。
 彼はその時、外務省を辞めた後の厳しさをさり気なく語り、まだ若い私に早まったことをするなと諭してくれた。その時の彼の言葉の中で鮮明に覚えている事が二つある。その一つが小和田外務次官(あるいは当時は官房長だったかもしれないが)が浅井さんに対して、「辞めたあと外務省に弓を引くような事をしたら、外務省は省をあげて君を潰しにかかるから」と言ったという言葉である。もう一つは、自分は外務省の若い連中から、「浅井が外務省に近づいてきたら石をぶつけて追い返せ」と言われているらしいと苦笑しながら語った言葉である。その時私は、外務省という組織の度量のなさと、外務官僚の卑しさを感じたものだ。2年前に外務省を去った私は、改めてその時の浅井さんの言葉の正しさを身をもって感じている。と同時に浅井さんの当時の勇気に感心し、圧力に負けずに信念を貫き通し、平和外交の重要性を訴え続けてきた浅井さんの苦労に頭が下がる思いだ。今度の広島平和研究所所長就任はそんな浅井さんへの勲章である。広島平和研究所もこれ以上ない人を獲得したといえる。
 今の外務省をみるがいい。米国追従の外交が完全に行き詰まり、米軍再編への協力を迫られる小泉政権は平和憲法を放棄させられようとしている。歴史的な過ちの淵に立たされている。浅井基文さんの主張の正しさが見事に証明されつつある。
 私は浅井さんに不義理をしてしまった。あの時以来、お礼の連絡もしないまま今日に至っている。外務省を辞めた後も、気に懸けてはいたがまだ挨拶できずにいる。毎日新聞に出ていた写真の笑顔は浅井さんの穏やかな人柄をよく表していた。元気そうで何よりだ。是非とも新しい任務にその能力を発揮してもらいたい。できるだけ早い機会に私は広島を訪れて、あの時以来の非礼をお詫びしたいと思っている。そして浅井先輩のあとをついて日本の平和外交実現の手助けをさせてもらいたいと思っているのである。

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2005年05月13日

【バックナンバー】2005-05-13

核の先制攻撃を視野に入れ始めた米国

 しんぶん赤旗の情報力については頭が下がる。大手新聞もこういう報道をして欲しい。
13日のしんぶん赤旗は、一面トップで、米軍統合参謀本部が核使用の具体例を記した作戦文書を準備していることを明らかにした。「統合核兵器作戦ドクトリン」がそれだ。そこには、例えば、日本に寄港する原潜を海洋発射巡航ミサイルが搭載できる状態に保っていることが明記されているという。これだけでも国会で大問題となる非核三原則違反である。ところが、もはや今の自民、民主の二大親米政党が主導する国会では、安保議論はまったく行われない。
 驚くべきは、このドクトリンの中で「米軍・多国籍軍・同盟軍から市民に対して、大量破壊兵器を使用する意図を持つ敵」に対し、戦域核兵器を使うと述べている事だ。「意図を持つ」だけで、核兵器の先制攻撃を行うというのである。
 ときあたかもニューヨークでは核不拡散防止条約の再検討会議が行われている。多くの非核保有国が核兵器の廃絶や不使用を求めている。そんな時に、米国は非核保有国の願望を真っ向から否定する方針を平然と進めているのだ。
 問題は、イラク戦争で米国の有志連合に参加し、さらに米軍再編で今後世界のどこであれ米国の先制攻撃に参戦していく小泉政権が、日本を核兵器使用の「共犯者」にしてしまう危険性がある事だ。
長崎・広島の筆舌に尽くしがたい原爆被害を経験した日本が、その原爆攻撃の加害者となる。こんなことは決して許されてはならない。日米軍事同盟の見直しを、本気で真剣に考えなければならない岐路に差し掛かっているのだ。